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[2018.08]ムラット・アイデミールとクリストス・バルバス ~歴史を緩やかに変革する響き~

文●関口義人 text by YOSHITO SEKIGUCHI

 2017年7月にトルコ、スーフィー音楽を携えて来日し、岐阜県郡上八幡音楽祭に登場したタンブーラ奏者、音楽学者でもあるムラット・アイデミールが若きネイ奏者クリストス・バルバスとともに再びやってきた。公演は東京、大阪で各1回のコンサートだけ、という小規模な内容ではあったが。

 太陽と海の演出する映像美と解放感が想定される「地中海」だが、この地で育った者たちにとっての「地中海」は途方もない帝国の盛衰と、その背景としての歴史の長さの前に立ち尽くしてしまう厚い壁のような存在なのだ。ビザンチンとオスマンはもちろん、そのまま現在のギリシャ、トルコではない。キリスト教を礎にした東ローマ帝国と中央アジアの遊牧民から伸長したオスマン帝国。そしてそこにゆったり流れた深い古典や宗教的詠歌の結晶たち。

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