[2021.10]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品をめぐって⑨(番外編)】 《Fotografia》、そして、ボサノヴァのスターから「音外れになることを学んだ」という後輩たち ─ カエターノ・ヴェローゾ作 《Saudosismo》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
お知らせ●中村安志氏の執筆による好評連載「シコ・ブアルキの作品との出会い」についても、今後素晴らしい記事が続きますが、今回は一旦、この連載「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」の方を掲載しています。今後も、何回かずつ交互に掲載して行きます。両連載とも、まだまだ凄い話が続きます。乞うご期待!!!(編集部)
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前回ジョビン8回目の記事では、名曲「デザフィナード」が、その後もボサノヴァという革新的音楽を象徴する存在だけにとどまらなかったと、申し上げました。このことは、例えば、ボサノヴァ時代の直後に興隆した運動であるトロピカリズモを率いた名手カエターノ・ヴェローゾが、デザフィナードが生まれて約10年後となる1968年に作った歌「Saudosismo(懐古主義)」という曲に、よく現れています。
カエターノやジルベルト・ジルといったバイーア州出身の若手アーティストは、ジョビンの生み出したサウンドと、それを鋭い響きで納得させたジョアン・ジルベルトの演奏に啓発され、それまでブラジル音楽であまり使われなかったエレキギターをふんだんに用いるなどして、形式的にはアメリカのロックなどを取り込んだ時に激しい曲など、新しい挑戦を展開していった人々です。その後たちまち、ブラジルの全国的スターとなっていきました。
(注:トロピカリア運動またはトロピカリズモについては、カエターノ自らが後年著した書籍「Verdade Tropical(邦題:熱帯の真実)」に詳しいので、そちらに譲ります。)
「Saudosismo」の歌詞を、ご覧ください。過去を振り返り、古き日々を懐かしむような言葉の中に、いくつもの面白い要素が散りばめられています。
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