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[2018.02]連載 太平洋の向こう岸からの手紙 #8 『雨』

文●フアン・フェルミン・フェラリス

 「雨」はアルバム『ラス・コサス』の4曲目で、そこで扱っているのは個人的な言葉です。前号では、アルバムの詩がどのようにつくられたかお伝えしました。要素や感覚に纏う深みを簡潔な詩にする。「雨」がレパートリーに加わったのは書いた中でも新しいほうです。たとえ雨を記憶と結びつけることが一般的な比喩でも、それはアルバムの詩的な提言を統合するためのものでした。

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 この歌を作った時のことを覚えています。とても短い時間でしたから。ある夜、家へ帰ろうと歩いているとだんだん雨が強くなっていったのです。雨を見て歩きながら、私にとって雨が重要なものだと考えていました。私に起こったことは月や海などでもあった現象です。考えていたのは、雨が降ったとき眺める人それぞれが違うものを見ているということ。とはいえ私は誰もが雨に美を見出すものだと思っていたのですが、これは間違いでした。雨はそれぞれの文化で何かを意味し、自然を愛する人には恵みですが、他の人にとって豪雨は洪水を象徴するものです。とりわけ私が住む街でも数年前に大惨事を受けました。

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