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[2018.06]ブラジルフィールドワーク #01 サンパウロ LGBTプライドパレード

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO

ブラジルのどんなところが好き?

 そう聞かれたら、答えたい。

 ごちゃまぜの多様性。それから、どこか突き抜けた明るさ、たくましさも。

 そんな愛するブラジルの「らしさ」がいちばん凝縮しているのはこれ、とひそかに思う祭りがある。喜び、そして深い憤りや哀しみすらも明るさの高みに昇華する、多様性を祝う祭典だ。その日がまたそろそろやってくる。


レインボーカラーに染め上がる街

 サンパウロの目抜き通り、パウリスタ通りをレインボーカラーに染め上げる「サンパウロLGBTプライドパレード」。22回目を数える今年は6月3日に開催の予定だ。

 セクシャルマイノリティの祭典であるプライドパレードは世界各地で開かれている。なかでもサンパウロのパレードは参加者数300万人を誇り、2006年には「世界最大のプライドパレード」としてギネスブックにも登録された。

 かねてから行きたいと思い続けていたパレードに昨年はじめて参加することができた。その様子を報告したい。

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パウリスタ通りを端から端まで埋め尽くして歌い踊る人の流れが、途切れることなく何時間も続いていた。


 全長2・7キロ。真っすぐに伸びるパウリスタ通りは、朝早くからたくさんの人が集まっていた。色とりどりの飾りを身につけた人。仮装をした人。豪華に着飾ったドラァグクイーンと一緒に記念撮影する人も。まだそんなに混まないうちは、子どもと一緒の家族連れの姿も多く見られた。以前、ゲイの友人が語ってくれた話を思い出した。

 ある年のパレードで、なぜ参加したのかを知りたくて、小さな男の子を抱いたカップルに声をかけてみたのだという。

「こう答えてくれたんだ。将来、自分たちの息子がゲイであれヘテロであれ、我が子を理解して受け入れることのできる親になりたいし、他者を差別しない人に育ってほしいから、って」。

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