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[2016.09]YOSHIRO広石 —歌手生活60周年—

文●佐藤由美 texto por YUMI SATO

 歌手の個性や人生の積み重ねによって、歌の姿かたちは驚くほどに変わる。もちろん聞き手次第で、その歌じたいの伝わり方も当然違ってくる。
YOSHIRO広石のパフォーマンスが海外、とりわけラテン世界で圧倒的に支持される理由は、リスナーが彼の歌に自分と同じ感情が溢れていると、瞬時に匂いを嗅ぎ分けるからだ。それは、一朝一夕では決して身につくことのない流儀。長年どんなに経験を積んだからといって、誰もが獲得できるとは限らないセンス。10月23日の記念公演を前に、彼だけがもつ自由で濃密な独特のスタイルを育んだ、60年のキャリアの一端と近況をご紹介したい。(7月22日、インタビュー取材)

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—— 前回の記事(2015年8月号、石橋純氏)の見出し「救いようのない人生に捧げる親密な歌」は、クレイジーで素敵でした。ラテンアメリカの聴衆と、歌のメッセージや感覚を共有してこられた方にふさわしい。

YOSHIRO広石 決して僕はポジティヴな考えじゃないんだけど、最終的にはどんでん返しのようにポジティヴさにもって行く。精神的ですけども、それって伝わるんですよね。例えば「ウノ」は、日本では高尚な歌ですが、あちらではもう全員が最初から歌う。なんか救いようのない歌なんだけども、ラテンアメリカの人って好きですね。好きで好きで、涙流して喜ぶ。もちろん僕はタンゴでは歌わず、タンゴ=ボレロ=バラードと、あくまで自分のスタイルです。それは、この10年拘ってきました。その時々で一番自分が表現したい、表現し易いアレンジにしています。

—— 55周年のリサイタルのために、オマーラ・ポルトゥオンドが駆けつけました。あの公演で、YOSHIROさんの存在感を思い知らされた若いファンも多かったのでは?

YOSHIRO広石 そうなんですが、あの時のことはもう忘れたいぐらい……来日前のトラブルとストレスで3日間寝られなくて、突発性難聴になって。トラブルに遭った彼女自身は、着いた翌日のステージが一番元気でした。今年3月にブエナ・ビスタ・ツアーで来日したときも、6月にキューバで会ったときも、歌い出すと元気でしたよ。

—— 今回、キューバに行かれた目的は?

YOSHIRO広石 6月に2週間行って、ボレロ・フェスティバルに出演しました。今回行った甲斐があったのは、オマーラとエレーナ・ブルケが歌った「アミーガ」を、僕がエレーナ・ブルケの立場の男性ということで、ちょっと歌詞を男性形に変えて、デュエット用に録音してきたんです。意味はまったく同じですが、結局つらいこともいいこともあるけど、歌で結ばれてきたからまだ歌い続けましょうよ、という歌です。演奏にオマーラの声だけ入れて、僕の歌はゆっくり。この曲をメインにどう広げるか、少しずつ時間をかけて次作にするつもりです。これはもう、最高の遺産……といっても、どっちが先に逝くかわからないんですけれど(笑)

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