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[2017.10]【第8回 カンツォーネばかりがイタリアじゃない】イタリアのサザンは自撮りで夏を制す タカギ・エ・ケトラ 「セルフィー軍団」

文● 二宮大輔

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タカギ・エ・ケトラ(Takagi & Ketra)

 いま私は大変なバブル期にある。記事も書くし翻訳もするけれど、夏期はなんといってもバカンスで日本に来るイタリア人観光客のためのガイドや電話対応をするのが、私の主な仕事となる。この観光客が、現在うなぎのぼりに増えており、日本政府観光局の発表によると、2016年の訪日イタリア人は前年比15%増の11万9000人。今年はさらなる増加が見込まれている。

 そんなイタリア人観光客が日本に来る一つの目的は、写真を撮ること。全員が全員というわけではないが、撮影後は早速SNSに掲載して友人たちの反応を楽しんでいる。そんなわけでガイドとしての案内中は、お寺でパシャリ、お城でパシャリ、着物姿の女の子とパシャリ。彼らにしてみれば、コンビニや電柱、スクランブル交差点など、日本の何気ない日常風景まで物珍しいのだ。

 一度「洗濯をしたいとホテルのフロントに頼んだら、コインランドリーを紹介された」と、クレームの電話をかけてきた新婚旅行の男性客がいた。お店やホテルの対応の悪さに憤慨しており、日本のことがお気に召さないご様子。ところが、連絡を取り合うために交換した彼のSNSアカウントのプロフィール写真には、ちゃっかり清水寺を背景に自撮りした画像が公開されており、思わず失笑してしまった。

 猫も杓子もセルフィー。そんなイタリアの時勢を切り取ったヒット・ソングが今夏、誕生した。タカギ・エ・ケトラ(Takagi & Ketra)の「セルフィー軍団」(L'esercito del selfie)である。もともと別々のヒップホップ・グループで活動していたタカギことアレッサンドロ・メルリと、ケトラことファビオ・クレメンテの二人ユニット。5年前にラジオ番組がきっかけで知り合い、ミラノの音楽スタジオで共同制作を始めた。これまでにも、ラウラ・パウジーニなど国際的なビッグ・ネームを始めとした様々なアーティストに楽曲を提供してきた彼らが、2017年6月、タカギ・エ・ケトラの名義でシングルを発表することとなった。それが「セルフィー軍団」だ。

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