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[2020.03]Iñigo Vontier

文●鈴木多依子 text by TAEKO SUZUKI

 イニゴ・ボンティエル(Iñigo Vontier)は、メキシコ・グアダラハラ在住のプロデューサー/DJ。2017年にレーベルCalypso Recordsをアルゼンチン人のトーマス・ジャクソン(Thomass Jackson)と立ち上げ、ニコラ・クルースやデンゲ・デンゲ・デンゲらの作品をリリースするカナダのレーベルMulti Cultiとのコラボレーション、Burning Manを始めとする海外のレイヴやフェスでのプレイと、ここ数年でぐぐっと世界のクラブミュージックシーンで注目されるようになった。(1月末から予定されていたアジアツアーがキャンセルとなり初来日は遠のいてしまったが……)

 実は最近、メキシコはアーティスト活動がしやすい国とよく耳にする。家賃は安いし、食べ物は美味しいし、ニューヨークやベルリンに住むなんてもう時代遅れなんて声も聞いたりする。実際、筆者の住むメキシコシティにも移住する外国人が増えていて、古い歴史とローカルな下町文化、そして若者によって活性するアートカルチャーが混在する街が放つエネルギーは、めちゃくちゃ刺激的でスパイシーだ。米国と南米に挟まれたメキシコの地理的な要素も、欧米と南米を結ぶ音楽のクロスポイントとしての役割を果たしているのかもしれないし、イニゴのサウンドはまさにそんな今メキシコで起きているインターナショナルな環境とシンクロするような、新しいラテンミュージックとして進化を続けている。

 イニゴが生み出すユーモラスでエキゾチックなサンプリングを取り入れた摩訶不思議なサイケデリックサウンドは、南米発信のエレクリック・フォルクローレとは一線を画すものがあるし、20代にしてレーベルを運営し世界のレイヴシーンでも評価される多彩な才能には、新しいラテンの音楽世界を期待せずにいられない。そんなラテンのダンスミュージック界で今もっとも注目を浴びる彼に、話を聞いた。

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