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[2018.11]特集 人生と音楽 〜出会いと別れ〜 今福龍太

今福龍太●文化人類学者、批評家。東京外国語大学大学院教授。巡礼型の野外学舎「奄美自由大学」主宰。著書に『クレオール主義』『ミニマ・グラシア』『群島 - 世界論』『レヴィ=ストロース 夜と音楽』『薄墨色の文法』『書物変身譚』『わたしたちは難破者である』『ハーフ・ブリード』『ブラジル映画史講義』など。


 短い旅にも出会いと別れがある。

 フォルモーザ!むかしのポルトガル人航海者たちがこう呼んだ「麗しき島(イーリャ・フォルモーザ)」台湾。古い鹿港(ルーガン)の港町での数日間の滞在のあいだに、久しぶりに再会した親しい友は妻と別れていた。傷心を押し隠した彼とともに、車で長いトンネルを抜けて東海岸の宜蘭(いーラン)の波立つ海岸までドライブする。問わず語りに彼に語りかける私の物語は、むかしホノルルで出会い、その一年後に彼の地で没したある亡命ルーマニア老詩人が毎日書いていた、母国語での日記のような四行詩(カトレーン)の話。懐旧の甘い疼きと、流浪の境涯の苦さがないまぜになった小さな詩篇群。いくつもの見えざる国境を越えて辺境の島に漂着した声の断片。

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