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[2017.07]【第6回 カンツォーネばかりがイタリアじゃない】クラッシュ・キッド、ピオッタ、プリモ・ブラウン 高架下のヒップホップ文化

文● 二宮大輔

クラッシュキッド (1)

 トラステヴェレ駅の高架下に大好きな落書きがあった。

 地下鉄の車両、店のシャッター、ビルの壁、ローマにはいたるところに落書きがある。いちばん多いのは「ラツィオのクソ野郎」や「人種差別反対」など、特定のサッカーチームの悪口や社会的なメッセージをスプレー缶で走り書きしたもの。もう一つは、もっと本格的なフォントで、ヒップホップのアーティストやグループの名前を描いた巨大なロゴマークのようなもの。さらに、1910年のメキシコ革命を発祥とするムラーレスと呼ばれる壁画も無数に描かれている。最近ではムラーレスにヒップホップの要素を融合させたような落書きも少なくない。町を汚す落書きではなく、芸術として公認され始めた感がある。高速道路下の巨大落書きがそのまま小説の表紙に使われたり、アーティストに依頼して自社を取り囲む壁にムラーレスを描かせたりという例も見られる。すぐに消されてしまったが、町のど真ん中に、法王がまるぺけをして遊ぶ落書きが突如現れたことも、大きな話題となった。

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