[2019.09]島々百景 #42 サンパウロ
文と写真:宮沢和史
2018年は日本からの781名の移民達を乗せた笠戸丸がプラジルのサンパウロ州、サントス港に上陸してから110年目の年だった。大農園において想像だにしなかった奴隷同然の労働力としての待遇に甘んじなければならなかった負のスタートから110年が経過し、現在ブラジルでは様々な分野で日系人達が活躍の場を拡げている。2008年のブラジル日系移民100周年の際には4都市5公演の単独コンサートツアーを行ない、日系移民の方々ならびに、現地の日系以外のブラジル人の方々と交流し、100年の歩みを大いに喜び合った。その100周年と2009年の日本人アマゾン地域入植80周年式典、コンサートへの参加から実は9年間もブラジルから遠ざかっていたのだが、2017年のアルゼンチン遠征の際、ほんのひとときだけサンパウロとリオデジャネイロに久しぶりに立ち寄った。限られた時間にできる限り音楽を吸収したくてライヴハウス巡りに終始したのだが、ほんの数日間にもかかわらず、久し振りのブラジルからたくさん刺激をもらった。当時、自分は歌手活動を引退していた身でありながら、音楽家としての意欲が沸き立つ旅となった。その時の旅が無かったら現在のような音楽活動再開は無かったかもしれない。それからほどなくして、前触れ無くサンパウロで毎年行われている大規模な日本祭りと合わせて行われる、日系ブラジル移民110周年の式典でのコンサートの依頼が舞い込んできた。自分にとってこのお誘いは何かの運命、ブラジルとの新しいご縁の始まり、そんな予感がして、ためらう事なく参加の返事をし、地球の反対側まで旅に出た。
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