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[2020.12]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り5】 沖縄の綱引き −夏折目の統合・厄祓・競合−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)

 沖縄の夏から秋にかけて各地で催される一大イベントとして、綱引きがある。人々が雄綱と雌綱を貫(かぬち)棒で固定し熱狂的に引き合うさまは地域毎に少しずつ様相が異なっていて、それぞれ独特の個性を発揮している。ここで、沖縄の綱引きに見られる諸特徴を列挙してみよう。

(1)綱引きは夏の大きな節目、折目(おりめ)の時期に行う。地域によって旧六月、旧七月、旧八月十五夜などと決まっている。
(2)集落を東/西(あがり/いり)に分け、各々で綱(雄綱、雌綱)を準備する。
(3)綱引き当日には、東西別々に綱(雄綱、雌綱)を担いで地域内を巡回する。
(4)ドラ、鉦、法螺貝などで構成される鉦鼓隊が綱の巡回を盛り上げる。
(5)東西に分かれた雄綱、雌綱を地区の中央に運んでくる。
(6)雄綱と雌綱を結合させ、貫棒で固定して、綱引き勝負を始める。
(7)綱引き勝負は一回ではなく、日程の間に何度か行う。
(8)綱引き勝負の前後には、その周りで旗頭、棒術、空手、獅子舞、鉦鼓隊、歌合戦などが登場して様々な「ガーエー」を行い、場を盛り上げる。
(9)最後の綱引き勝負には「西が勝てば豊年豊作」などの言い伝えがあることが多い。
(10)綱引き終了後に、綱の一部を川や海に流すことがある。

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