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[2012.01]カエターノ・ヴェローゾ&マリア・ガドゥ「ブラジルで最も愛されている2つの声」

文●花田勝暁 texto por KATSUAKI HANADA

 コンサートのメイキング映像を見ていたら、こんな言葉があった。グローボ系のTV局ムルチショーの若い綺麗な女性インタビュアーが、カメラチームにインタビューする時の言葉だ。「この国で最も愛されている2つの声とのコンサートをディレクションするのはどうですか?」

 ワイドショーのインタビュアー的に多少無責任なところもある発言だが、カエターノとマリア・ガドゥを「この国で最も愛されている2つの声」を称するのを、今の状況で、誰かはっきりと反論できるだろうか。ブラジルで最も愛されている2つの声──

 カエターノとマリア・ガドゥ。この2人で弾き語りのライヴを行うというニュースが発表された時、ブラジルでも多くの驚きの声が上がった。そして、意外だったのだが多くの批判の声があり、その理由の一部は、〝カエターノ〟が〝マリア・ガドゥ〟の人気に乗っかろうとしているというものだった。〝マリア・ガドゥ〟が〝カエターノ〟の人気に乗っかろうとしている、ではなく……

 マリア・ガドゥの作品が、日本で国内盤として発売されるのは今回が初めてだが、ブラジルでは、これまでにオリジナル・アルバム1枚(09年のデビューアルバム『マリア・ガドゥ』)、ライヴアルバム2枚を発表している。ライヴアルバムのうちの1枚は、本作であり、もう1作はデビューアルバムの曲を中心に、マリア・ガドゥが本来の彼女のバンドと収録したアルバムである(2010年の『ムルチショー・アオ・ヴィーヴォ』)。このライヴが決定した際には、彼女はオリジナル・アルバム1枚しか発表していなかったわけだが、そのデビューアルバムが、破格の称賛を浴び、破格のヒットをしていて、一部の音楽ファンの間で、すでに冒頭のような声が上がるような状況だったのである。デビューから1年で、圧倒的な人気を獲得していたマリア・ガドゥ。録音当時は24歳、この12月で25歳になったばかりの彼女のキャリアを確認してみたい(※デビューの経緯は本誌2009年9月号の肥田哲也さんの「MPBシーンに現れた22歳の新星 マリア・ガドゥへの期待 」も改めて読んでみて下さい)。

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