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[2018.11]特集 人生と音楽 〜挫折〜 宮沢和史

宮沢和史(音楽家)●THE BOOM解散後、充電期間を経て、2017年から歌手活動を少しずつ再開、本年11月末から来年初旬にかけて全国ツアー「時を泳げ魚の如く」を行う。沖縄芸術大学で非常勤講師も務める。

挫折…… 人はこの言葉を回避するために幼い頃から学び、知恵と力をつけてきたはずなのに早かれ遅かれ、いずれ、この二文字にぶち当たる。大きさは人それぞれ……。自分が「届かなかった……。足りなかった……。」と敗北を認めればそれが挫折だ。頑として敗北を認めないという手もある。しかし、それを繰り返していたら魂がゆっくりと砂の池に沈んでいっていずれ立てなくなってしまうだろう。挫折の最中にいる時は目に映る景色がポジからネガに反転する。自分以外の人間が言うことが全て正しくて、自分が考えることはすべて間違っていると思えてくる。そんな時、ポジの景色に一点だけ光が差して見える気がする。生まれ故郷の方角だ。どこにも居場所がなくなっても故郷だけはおかえりと言ってくれる。「しょうがないなぁ」と許してくれる。社会に出てから出会った人とは違って、故郷の仲間はたまたま近くに住んでいたというだけの関係だ。だからこそ尊い。かけがえがない。故郷の仲間たちに今更頼みたいことは何もない。彼らは自分にとって宝物だから物事を頼みたくない。いくら時が過ぎても故郷には腰掛けてもいい椅子がある。

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