[2018.07]ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ ★ アディオス
文●田中勝則 text by KATSUNORI TANAKA
時間が経過するのは早いものだ。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のCDが発売されたのが1997年だから、もう20年以上が過ぎようとしている。
イギリスのインディー・レーベルであるワールド・サーキットにとってはじめての海外レコーディングになったのが、96年に制作されたこのアルバムだった。ワールド・サーキットの社長であるニック・ゴールドはこのとき、若い頃からあこがれていたライ・クーダーをプロデューサーに迎え、ハバナにあるキューバ国営レーベルのスタジオで西アフリカとキューバの音楽家たちの共演アルバムを作ろうとしていた。でも、ここでハプニングが起きる。ニックやライたちがハバナで待つ中、西アフリカ組が突然来れなくなってしまったのだ。そこで代わりに作られることになったのが『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』だった。同時進行で録音されていたアフロ・キューバン・オールスターズのアルバムがキューバ音楽の黄金期である50年代に活躍したベテランたちを一同に介したような内容だったが、急遽作られた『ブエナ・ビスタ』のほうではさらに古い時代にワープ。30~50年代の音楽を、当時すでに引退していた音楽家たちを引っ張り出して再構築することにした。ライ・クーダー自身もセッションではスライド・ギターで参加している。
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