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ラティーナ夏セール オススメの10枚(アルゼンチン盤)

①RODRIGO CARAZO/OIR E IR
1,870円

 これは相当な逸材ではないだろうか。アカ・セカ・トリオのフアン・キンテーロを思わせる伸びやかな歌声に、一気に惹き込まれてしまった。1985年生まれのロドリゴ・カラソは、コルドバ出身のシンガー・ソングライター。ロックからフォルクローレまでの素養を持つ新しい才能だ。彼の特徴はその声だけでなく、全曲自身で楽曲やアレンジも手がけており、ソングライティング能力も申し分ない。ソフトでフォーキーなナンバーが中心だが、「アストロラビオス」のようなに、ソウルフルなグルーヴをフォルクローレに持ち込むセンスもなかなかのもの。少しサイケデリックな雰囲気を持ったラストの「オイール・エ・イール」などは、プログレッシヴ・フォルクローレとでもいいたくなるようなスケールを感じさせる。まだ芽が出たばかりの新人ではあるが、アルゼンチン音楽シーンを牽引する存在になる予感がしている。(栗本斉)


②LUIS ALBERTO SPINETTA/YA NO MIRES ATRAS(LP)
5,500円
 L・A・スピネッタのキャリアの総集編となった『Bandas Eternas(2010)』のライヴより前、まだまだバリバリで活動していた2008〜2009年の音源が発見された。リリースは「音楽家の日」と制定された1月23日に生誕70周年を記念して行われた。モノ・フォンタナ、クラウディオ・カルドーネ、セルヒオ・ベルディネッリ、ネリーナ・ニコトラら晩年をサポートした気のおけないメンバーが参加。発表年が近い『Pan(2005)』、『Un Mañana(2008)』の続編のように幽玄的で近未来的な雰囲気は保ちつつも、メランコリックなフレーズは少なく、純粋にこのバンドでの演奏を噛みしめるように楽しんでいるように感じられる。(宇戸裕紀)


③MERCEDES SOSA /CANTORA 1
1,100円

 今年で74歳、 ”ラテンアメリカの大地の母” の最後(?)となるかも知れないスタジオ新録がついに出た。J・M・セラート、カエターノ、サンオラージャ、P・アスナール、シャキーラ、J・ベネガス、スピネッタ、L・ヒエコ、T・パロディ、そしてM・グラーニャ&L・フェデリコなどの蒼々たる豪華アーチストたちと全17曲共演したサプライズ・アルバム。この後、さらに『カントーラ2』、DVD版もリリース予定。


④GABY ECHEVARRIA /PARA PINTARTE
880円

 ピアノ弾き語りで歌うアルゼンチンのシンガー・ソングライターが、前作『Alli』以来3年ぶり3作目のアルバムを発表。彼女の特性は、研ぎ澄まされたピアノの音色と、誠実さに満ちた美しい歌声。その印象は一切ぶれずに、さらに音色や質感が豊かになった。また、彼女のソングライティング能力も高く、室内楽的なアレンジをメインにした楽曲群は、いずれもスタンダードといってもいいメロディばかり。カヴァーも2曲あり、ホルヘ・ファンデルモーレの名曲「ビダラ・デ・ラス・エストレージャス」を一人多重アカペラで仕上げる技も見事だし、アカ・セカ・トリオのマリアノ・カンテーロの躍動するドラミングを従えたリト・ネビアの「ソロ・セ・トラタ・デ・ビビール」も後半のクライマックスとなっている。全体的にピアノと声を中心に清冽な空間を作り上げ、いつまでも身を委ねていたくなる心地いい音楽に仕上がっている。(栗本 斉)

⑤PAULA Y LOS PAJAROS /LO INVISIBLE

1,540円

 2015年に発表した『ミクロムンドス』が話題を呼んだパウラ・トーレ率いるアルゼンチンのグループが、4年ぶりに2作目を発表した。今作もジャズ、フォルクローレ、ロックなど様々なジャンルをミックスした越境音楽を展開しており、一曲ごとに非常にスリリングな体験ができる。スピネッタのサポートで名を上げたクラウディオ・カルドネもゲスト参加しており、変拍子を駆使した演奏やチェンバー・ロック的なアンサンブルはほとんどプログレの粋。とはいえ難解になりすぎず、最終的にはパウラの歌声が心地よく耳に残るというのがさすがだ。ラストにはコトリンゴとの共演曲も収録。(栗本 斉)



⑥RAMIRO FLORES /EL JARDIN DE ORDOÑEZ
1,100円

 アルゼンチンのジャズ・シーンの主流は、ECMレーベルを思わせるアコースティックでクラシカル。そんな固定観念を軽くふっとばすソリッドなエレクトリック・ジャズの豪快作。2007年に自身のリーダー作でデビューしたサックス奏者のラミロ・フローレスは、ロックやフォルクローレ、現代音楽などから多大な影響を受けて、独自のミクスチャーを追及する先鋭的なプレイヤーだ。本作では、ブーツィー・コリンズばりにエフェクトされたベースを弾きまくるエルナン・セグレーをプロデュースに迎え、力強いブロウを聴かせてくれる。加えて、流麗なピアノも演奏するなどその多才ぶりを発揮。人力テクノとでもいうべきダンサブルなビートから、エレクトリック・マイルスとも共振するスペイシーなフューチャー・ジャズまで、一筋縄ではいかないサウンドが次から次へ現れ、アルゼンチン随一の前衛作品に仕上がっている。(栗本 斉)


⑦MARTIN BUSCAGLIA /BASTA DE MUSICA

ウルグアイが誇る永遠の怪童マルティン・ブスカグリアSSWの快心作。七変化でポップの王道を突き進む。その癖の強さになぜか口ずさんでしまう。CD・レコードあり。

1,540円(CD)/1,870円(LP)


⑧GEORGINA HASSAN /MADRESELVA

1,650円

 フォルクローレ・シーンきっての美声を誇るシンガー・ソングライターによる4作目。長年の付き合いであるディエゴ・ペネラスが大半の楽曲をアレンジしており、ギターとピアノを駆使しながら全体をオーガニックな質感のサウンドに仕上げている。前作『Tornasol』ではカルロス・アギーレなど多彩なゲストが参加していたが、今回も豪華なメンバーが集結。「Jilguerito」ではマルセロ・モギレフスキーが加わり、管楽器のみをバックに歌うアレンジが斬新だ。他にもデ・ボカ・エン・ボカやチリの御大インティ・イリマニといったゲストにハッとさせられながら、包容力に満ちた歌声に酔える。(栗本 斉)


⑨FLOR BOBADILLA - IGNACIO AMIL /CIPSELA

1,100円

 クラシックからジャズ、フォルクローレなど様々なジャンルから影響を受けたピアニスト、イグナシオ・アミル。ブエノスアイレス出身の彼が、女優としても活躍するシンガーのフロレンシア・ボバディージャと組んだ意欲作。アコースティックな室内楽的サウンドに乗せて歌われるのは、主にアルゼンチン・フォルクローレの古典だ。ラモン・アジャラやクチ・レギサモンなどのクラシックな楽曲も素晴らしいが、カルロス・アギーレの「エン・ラ・フロンテーラ」を取り上げているのがなかなかハイセンス。また、スピネッタの名曲「エカテ」をしっとりと歌い上げ、ジルベルト・ジルの「メイオ・ヂ・カンポ」を軽快に歌いこなすという対比も見事。フアン・パブロ・ディ・レオーネのフルートやマリアノ・ロイオコノのトランペットなど、サポート陣が発する音色も色彩豊か。よく計算されたアレンジで上品な歌声を引き立てている。(栗本斉)

⑩JUANJO DOMINGUEZ /JUANJO INTERPRETA A ZITARROSA
1,100円

 アルゼンチンのギタリストJuanjo Dominguezによるアルフレド・シタローサ曲集。シタローサはウルグアイの国民的なシンガーソングライターで詩人。ギタリストによるシタローサ集というのは他に聴いた事がないのでこのアルバムをとても興味深く聴いた。南米の大衆音楽としてシタローサの詩はその地域に暮らす人々の頭の中にあるが、一方でシタローサのように詩をメインにした音楽家の楽曲をインストにした時に外の文化圏の人にはそれがどう伝わるのだろうか。その点ではファンホ色のアルバムかもしれない。アルバムにはシタローサの代表曲である「ベーチョのバイオリン」などが収録されていて個人的には懐かしかった。自分がファンホの演奏を生で聴いたのは高校を卒業した頃だったが、当時のファンホの凄まじい演奏に衝撃を受けたのを記憶している。このアルバムは重奏だが、個人的にはファンホ・ドミンゲスの演奏はソロが好き。(笹久保伸)


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