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[2018.04]【連載 TÚ SOLO TÚ #216】ジャンルを超えて紡ぎ出される新たな音楽的融合 (U)NITYの織りなす斬新なサウンド

文●岡本郁生

 高橋慎一監督による話題の映画『Cu-Bop across the border』が公開中だ。2015年に公開されて異例のロングランを記録した『Cu-Bop CUBA~New York music documentary』をもとに、その後に激変したキューバ~米国情勢を踏まえて再撮影と再編集を施した作品である。前作にはなかった、ラッパーのテルマリーによるナレーションが挿入されるなど、よりわかり易さが工夫されているが、基本的な骨格は変わっていない。つまり、キューバを拠点に音楽活動を続けるサックス奏者のセサル・ロペス、そして、キューバからニューヨークへ移住したピアニストのアクセル・トスカ、それぞれの活動と、互いの交流が大きな柱として全体を貫いているのである。

 最大のハイライトは、映画の後半、ハバナにある国立芸術大学での、学生たちを前にしたライヴ演奏の場面だろう。ロペスのグループに続いて、正式なビザを取らないままメキシコ経由でキューバへ赴いたトスカとドラムスのアマウリ・アコスタ、ベースのルケス・カーティスのトリオが、気合いのこもった素晴らしい演奏を披露する。アコスタはキューバ系ながら彼の地を訪ねるのは初めて。エディ・パルミエリ楽団などで活躍するカーティスは父親が米国人、母親がプエルトリコ人だが、ふたりとは常に近いところにいて、一緒に音楽を作りたいという熱い思いから参加したという。おそらく最初は探りながらだった3人の演奏も、徐々に熱を帯び、強烈なインパクトを残して終わる。

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 このときの3人のユニット名が“(ユ)ニティ”だ(原語では(U)NITYなので、日本語ではこのように表記させていただくことにする)。今月は、この(ユ)ニティ名義のアルバム『(U)NITY IS POWER』をご紹介したい。

 『キューバップ』のオリジナル・サウンドトラック・アルバムの解説によると、これは「アクセルとアマウリが共同プロデューサーとなり結成されたユニットで」、「アマウリが自身のルーツであるキューバ音楽をベースにしながら幼少期から吸収してきた世界中の音楽を融合させて斬新なサウンドを創り出し、ニューヨークのクラブシーンを中心に活動している。バンド・メンバーはこの二人以外は流動的」とのこと。この映画のときは、たまたまルケス・カーティスがベースのトリオだった、ということのようだ。

アクセル・トスカ08

 なるほど。それで、アルバム・ジャケットにはアーティスト名が明記されず、単に『(U)NITY IS POWER』となっているわけか。

 レーベルは、エディ・パルミエリの最新アルバム『ウィズダム/サビドゥリア』もリリースしているRopeadope(“ロープアドープ”と読むのだろうか?)だ。アンディ・ハーウィツという人が1999年にニューヨークで創設、現在はフィラデルフィアに拠点を置き、ジャズ、ヒップホップ、ゴスペル、ラテン、エレクトロニック・ミュージックなど多様なジャンルを取り扱っているレーベルで、かつては、スナーキー・パピー、スパニッシュ・ハーレム・オーケストラ、クリスティアン・マクブライドらが在籍、現在も、クリスティアン・スコット・アトゥンデ・アジュアー、ネイト・スミスはじめ、一筋縄ではいかないさまざまなアーティストたちを擁している。

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