[2022.1]2021年ブラジルで流行った音楽
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[2022.1]2021年ブラジルで流行った音楽

e-magazine LATINA

文●noriji

まず初めに、この「ブラジルで流行った音楽」コラムでも、ここ数年常連で登場していたMarília Mendonçaについて。人気絶頂期にありながら、今年11月に飛行機事故で命を落としてしまいました。心からご冥福をお祈りいたします。

Marília Mendonçaにリスペクトの気持ちを込めながら、今年も「ブラジルで流行った音楽」を振り返っていきたいと思います。

セルタネージョ最強時代の終わり!?YouTubeランキングに異変


2021年5月、セルタネージョがトップ3から消える

2018年から公開された、YouTube公式の週間音楽ランキング。その開始から3年を迎えた2021年5月初週に、公式集計史上初めて、セルタネージョがトップ3にも入らないという事態が発生。

1位と2位はフォホー、そして3位はファンキという結果になりました。

さらにその翌週にはトップ5からも姿を消し、最上位は7位のMarília Mendonçaの曲でした。

2018年5月にYouTube公式が始めた週間ランキングですが、当時から必ず、セルタネージョはトップ3のうち最低1曲は入っていて、上位3曲ともセルタネージョであることも珍しくないという状況。

YouTubeに限らずストリーミング再生数ランキングでは、実はフォホーは去年からじわじわと勢力をあげていましたが、ついにセルタネージョ独占状態を崩すことになりました。

5月に首位を勝ち取ったOs Barões da Pisadinhaは、昨年このコラムでも人気急上昇中のジャンルとして取り上げたピザヂーニャ(pisadinha/フォホーの系譜を継ぐ、電子ピアノを使用した音楽)の代表的存在。
(昨年のSpotifyランキングでは、7位Anittaを上回り6位に入っていました)

2位のZé Vaqueiroはフォホー・ホマンチコを引っ張る22歳の歌手。DJ Ivisとのコラボ曲がランクインしました。

そして3位はサンパウロ出身、ファンキのアイドル的存在の一人、MC Don Juan。2001年生まれの20歳。

一般的にファンキといえば、いわゆる性的なものやドラッグなどを強調しているイメージが強いかと思いますが、MC Don Juan本人は「僕の曲は比較的 “ライト” な歌詞だから、より多くの聴衆の心を掴んだんじゃないか」とインタビューで語っていました。
(とはいえ、彼の曲に全く出てこない訳ではないことは補足しておきます。)

セルタネージョ低迷の原因は?

圧倒的なパワーを見せていたセルタネージョが、力を弱めたように思えますが、その要因とはいったい何なのでしょうか?筆者がブラジル国内主要メディアの記事を調査したところ、主に3つの理由が挙がっていました。

①コロナ禍での大規模なショーの減少
②他ジャンルのデジタル市場への順応力
③革新が生まれにくいジャンル

①Covid-19の影響により、大きなイベントやショーがほとんど行われず、楽曲が広まるきっかけが失われました。また、セルタネージョの広告活動はショーの収益に頼る傾向があるため、大幅な投資も控えられたようです。

小さなライブは徐々に戻りつつあったものの、大きなショーの代替とは到底なりませんでした。

②ファンキやピザヂーニャもショーに頼っていなかったのか?と言われれば、確かに少なからず影響は受けています。しかし、セルタネージョほどのダメージは受けていないようです。

ブラジルは巨大な国で、全国的に人気を勝ち取るには、莫大な投資があってこそ。セルタネージョのアーティスト達は資金的なバックアップもあり、スターダムにのし上がります。

しかし宣伝の主要なプラットフォームとして、セルタネージョ界はインターネットを活用する習慣があまりなく、それがショーの減少によって顕著になりました。

一方、ファンキやピザヂーニャは元々の支持者層がインターネット経由で音楽を聴く人が多く、プロデューサーらは爆発的な広がりが期待できると予測。

ファンキのプロデューサーはTikTokのインフルエンサーとタッグを組み、Kevin O Chrisの「Tipo Gin」などがバズりました。ちなみにこの曲はSpotifyの最も聴かれた楽曲トップ10にもランクインしています。


③ファンキやピザヂーニャといった音楽は、楽曲の録音ひとつとっても、楽器奏者を大量に集める必要もなく、スピーディーに作品を生み出していけます。話題になりやすい、バズりやすいサウンドを探究し、速いサイクルでチャレンジしていけますが、それに比べてセルタネージョは、「クリエイティブな革新が少ない」とみる専門家もいます。

ファンキやフォホー、パゴーヂなどを吸収し、「ファンキネージョ」、「フォホネージョ」、「パゴネージョ」などを創って成長してきたが、それ以上のものが生まれていないと言われていたり、「(セルタネージョは)均質化の時代を迎えている。ここ3、4年は再発明してないし、歌詞やアレンジやメロディも似たりよったりで、同じような曲ばかりだ。」という批評家も見られました。

Spotifyランキングから見る2021年の流行

上半期にYouTubeランキングで変化が見られたものの、年間ランキングではどうでしょうか。Spotifyのランキングをもとに、流行の傾向を見てみましょう。

2021年12月1日に発表されたSpotify年間ランキングを見ると、ブラジル国内で最も聴かれたアーティストは、Os Barões Da Pisadinhaでした。先述の通り、セルタネージョ最強時代に突破口を開いたピザヂーニャの代表的存在で、昨年の6位から一気にランクアップ。

一方で、最も聴かれた曲は、セルタネージョ男性デュオのIsrael e Rodolffoによる「Batom de Cereja」。ブラジル最大手のチャンネル、TVグローボの超人気リアリティー番組「Big Brother Brasil 2021」に採用されたことも1位の理由に繋がっているでしょう。

最も聴かれた楽曲ランキング1位にセルタネージョが入ったものの、トップ10のうち8曲がファンキとピザヂーニャという結果になりました。セルタネージョは去年は6曲でしたが、今年は2曲に終わりました。

最も聴かれた女性アーティストは、セルタネージョのMarília Mendonça、Maiara & Maraisaに続き、ポップやファンキ系のソロ歌手であるLuísa Sonzaと LUDMILLA が続きます。

最も再生されたアルバムは『Eu tenho a senha』。TikTokから流行の火がついた、フォホー・ピザヂーニャ系のJoão Gomes。実は彼は、Spotifyの世界ランキングトップ50の中に、唯一入ったブラジル人です。なんと年齢は19歳とのことで、ここでもZ世代の躍進が見られます。

そして最も聴かれたジャンルとなると、トップ5のうち3つはセルタネージョ系という結果になりました。

圧倒的セルタネージョ時代の牙城が崩されかけた2021年。来年以降もブラジル音楽のトレンドにどんな流れが来るのか楽しみです。

読者の皆さまもぜひ、流行曲を聴いてみてください!

【参考】Spotifyブラジル公式年間ランキング
◆2021年最も聴かれたアーティストトップ5
1. Os Barões Da Pisadinha

2. Gusttavo Lima

3. Marília Mendonça

4. Jorge & Mateus

5. Henrique & Juliano

◆2021年最も聴かれた女性アーティストトップ5
1. Marília Mendonça

2. Maiara & Maraisa

3. Luísa Sonza

4. LUDMILLA

5. Ariana Grande

◆2021年最も聴かれた楽曲トップ5
1. Israel & Rodolfo - Batom de Cereja - Ao Vivo

2. Diego & Victor Hugo - Facas - Ao Vivo

3. Wesley Safadão - Ele É Ele, Eu Sou Eu

4. João Gomes - Meu Pedaço de Pecado

5. Matheus Fernandes - Baby Me Atende

◆2021年最も聴かれたアルバムトップ5
1. João Gomes - Eu Tenho a Senha

2. Jorge & Mateus - Tudo Em Paz

3. Gusttavo Lima - O Embaixador - The Legacy (Ao Vivo)

4. Olivia Rodrigo - SOUR

5. Israel & Rodolffo - Aqui e Agora, Vol.1

◆2021年最も聴かれたジャンルトップ5
1. Sertanejo Pop
2. Sertanejo Universitario
3. Sertanejo
4. Funk Carioca
5. Pop

◆2021年最も聴かれたプレイリストトップ5
1. Top Brasil

2. Esquenta Sertanejo

3. Funk Hits

4. Paredão Explode

5. Potência Sertaneja

(ラティーナ2021年1月)


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