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濃密なサンバ時代を生きた95歳の長老 ネルソン・サルジェント インタビュー

文●佐藤由美 text by YUMI SATO

 ルーツ・サンバの真髄を知る最後の証人、ネルソン・サルジェント。90、92、94年以来、四半世紀ぶりの来日と聞いて胸躍らぬはずがない。創設37年、長年マンゲイラとの交流を培い、〝ヨコハマンゲイラ〟を標榜するエスコーラ・ヂ・サンバ・サウーヂへ届いた提案から、この度の来日が実現したという。

 本国で生誕をライヴで祝い、つい先頃メガイベント「ロック・イン・リオ」のステージも務めた驚きの長老とはいえ95歳、車椅子の長旅。だが周囲の懸念を払いのけ、飄々とした味わいのままに意気軒昂。浅草サンバ・カーニバルでマンゲイラ名誉会長の威光を示し、サウーヂの御所車仕様山車に鎮座して熱い歓声を一身に浴びた。思わず手を合わせて拝む者あれば、感涙にむせぶ者あり。浅草サンバ史上初の重鎮サンビスタ参加の快挙となった。

 1週間後、横浜にぎわい座地下、のげシャーレで行われた9月7日夜、8日昼の2公演は、公表されるや即日完売。優れた構成、サウーヂによる愛情深い手作りサンバ空間の演出が、舞台と客席を極上の感興で包み込む。かつての我々は主役サンビスタを盛り立てたいあまり、よく「ブラジルの観衆ごと日本に連れて来たい」などと口にしたものだが、もはやそんな必要はない。出演陣、全スタッフ、観客のサンバ愛と成熟度がとにかく素晴らしい!

 グルーポ・カデンシアの演奏力と編曲の妙にほだされ、初日のネルソンは曲が進むごとに若返ってゆき、今にも立ち上がって踊り出しそう。つられて70歳の森本タケルも、50代の輝きと歌声を取り戻していた。ほぼコーラスと通訳に徹するMAKOの存在も有効だし、主役入場時の「マンゲイラ讃歌」、最終盤「プリマヴェーラ」「サンバは死なず」の客席の大合唱に至っては、記憶に残る名場面と断言しておく。当然2日目は、のっけからトークに歌声にエネルギーが漲っていた主役の姿に、サンバを共に歌う歓喜パワーをあらためて痛感した次第。まさしく至福の余韻だった。

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