[2019.12]【連載】タンゴのうた 詩から見るタンゴの世界 第23回 淡き光に(ア・メディア・ルス)
文●西村秀人 text by HIDETO NISHIMURA
アルゼンチン・タンゴの5大有名曲には入るぐらい、よく知られたタンゴだ。器楽演奏と歌で同じぐらい録音がある珍しいケースでもある。
作曲者はロイド眼鏡で親しまれた楽団リーダー・バイオリン奏者のエドガルド・ドナート。ブエノスアイレス生まれながら、小さい頃からウルグアイのモンテビデオに移住したので、音楽家としてキャリアをスタートしたのはモンテビデオだった。まだ自己の楽団で華やかに活動し始める前の1925年、モンテビデオにあるウィルソン家の豪邸でダンスパーティが開かれていた。ドナートは四重奏団でダンスの伴奏をしていた(その時のバンドネオンはのちにパリにおいて最も成功したタンゴ人の一人フアン・デアンブローヒオ〝バチーチャ〟であった)。
エドガルド・ドナート楽団「淡き光に」(1941年)
「淡き光に」オリジナル楽譜
エドガルド・ドナート楽団のLPレコード(表紙はコリエンテス348番地の看板)
佳境を迎えた曲の合間、ドナートが言った:「それでは…淡い光で!」 突然灯りが消え、大窓から入ってくる月明りだけで、みんな踊り始めた。そこに招かれたゲストの中にウルグアイの劇作家カルロス・セサル・レンシがいた。
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