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[2019.08]ブラジルフィールドワーク #15 ブラジルに名前を与えた木 リオデジャネイロ植物園

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO

 リオデジャネイロで好きな場所のひとつが植物園だ。コルコバードの丘の上の展望台から見下ろすと、キリスト像の広げた右手の斜め後ろ方向に植物園の濃い緑が広がるのが見える。広大な敷地は面積140ヘクタールにもおよび、そのうち3分の2が森林保護区、残り54ヘクタールで世界の6500種の植物が植栽・展示されている。ブラジルの独立以前の1808年にポルトガル王室によって開設された。

 展示エリアはゾーニングされていて、たとえば「アマゾン」では珍しい種類の木が何種もそびえ立っている。私は毎年、アマゾン南部の先住民族保護区を訪問してジャングルの中を歩いたりもしているけれど、こうしてまとまった形でいろいろな珍しい木を見られる機会というのは、なかなかない。

 そしてもうひとつ、見逃せないお勧めのゾーンが「マタ・アトランチカの小径」。そこに、ブラジルの歴史を語る1本の木が立っている。


マタ・アトランチカの森

 マタ・アトランチカ(大西洋岸森林)は、北はブラジルの地図の肩が出っ張ったあたり、リオグランデドノルテ州から南は国の最南端まで、大西洋沿岸部を17の州を縦断しながら南北に走る長大な森林帯だ。アマゾン熱帯林やセラード(熱帯草原/サバンナ)などと並んでブラジルの主要なバイオーム(生物群系)を構成している。アマゾンに匹敵する生物遺伝子の宝庫であり固有種も多い。たとえば、マタ・アトランチカで見られる植物種の55%にあたる8000種が、また哺乳類261種のうち39%が、ここにしかない固有種である。

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