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【連載 ラ米乱反射 #138】革命は対米対等化のための唯一の方策 初来日のカミーロ・ゲバラに訊く

文●伊高浩昭(ジャーナリスト)

 革命家エルネスト・チェ・ゲバラ(1928~67)の長男カミーロ・ゲバラ=マルチ(55)が2017年7月から8月にかけて初来日した。チェ・ゲバラ歿後50周年(2017年10月9日)に合わせて封切られる日玖合作映画『エルネスト』(阪本順治監督、オダギリジョー主演、キノフィルムズ)の関連行事として8月9~27日、東京・恵比寿で開かれた写真展「写真家チェ・ゲバラが見た世界」の開場式に出席したり、メディアの取材に応じたりするためだった。6日には広島平和記念式典に参列、次いで京都も訪れた。そのカミーロに3日、東京・新宿で75分に亘りインタビューした。

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「革命は対米対等化のための唯一の方策だった」と強調するカミーロ・ゲバラ(2017年8月3日、松枝愛撮影)


▼記憶にない父親

── 経歴から語ってください。

「1962年5月20日に生まれた。モスクワ大学法学部に留学し、卒業した。だからロシア語を話す。弁護士になる道も開けたが、弁護士にはならなかった。政府関係のいろいろな仕事をして、いまはチェ・ゲバラ研究所でコオルディナドール(業務調整担当者)をしている。研究所は学究的部門と刊行部門に分かれている。家族は妻と娘3人、養子の男児2人がいます」

 【母アレイダ(81)は同研究所所長。姉アレイダ(11月で57歳)は小児科医、妹セリア(54)は海洋哺乳類専門の獣医。弟エルネスト(52)は弁護士だが、兼業として大型オートバイでキューバ国内を旅行する観光業を営んでいる。】

── あなたが4歳だった1966年にチェ・ゲバラはボリビアに去り、帰らぬ人となった。お父さんの記憶はありますか。

「父はボリビア行きに先立ち65年4月コンゴに行った。私は当時3歳で、父の記憶は全くない。父はボリビア遠征に備えて66年7月帰国したが、頭髪を剃るなどして変装していたし、会う機会も少なかった。そして10月末に出国し、永遠に帰らぬ人となった。私は4歳になっていたが、やはり記憶は全くない。記憶のないところに夢や空想が入り込んだ。後年いろいろな写真を見、たくさんの話を聴いたが、写真の印象や話と幼児期の架空の思い出が混同し、父親を見たのか幻想なのか、判然としなくなった。いま言えるのは、革命体制初期の当時、革命指導部はみな若く無経験だったため、革命社会を少しでもよくしようと必死に学び働き頑張っていたということ。父もそんな一人だったと思う」

── あなたのお姉さんアレイダから「父の記憶が定かでないため、父と母が深く愛し合った結果、私が生まれたと信じている」と聞いたことがあります。

「姉のその話には一理ありますね」

── あなたの名前は、チェ・ゲバラの盟友だった故カミーロ・シエンフエゴスに由来しますね。

「そうです。カミーロ・シエンフエゴスは1959年10月、カマグエイでの(ウベール・マトス司令官らの)謀反を鎮めに行き、その任務を果たした後、軽飛行機に乗ったまま行方不明となり、死亡認定された。父は私が生まれると、エルネストと命名しようとした。父の名も祖父から来ているし、ゲバラ家の伝統だった。すると母が、エルネストは子どもには重すぎ逆効果になりかねないと反対した。その結果、カミーロとなった。いずれにせよ、エルネストもカミーロもゲリラの名前ですが(笑)」

── チェの長男として生きるのは重たくないですか。

「差し引きすればプラスの方が大きい。もちろん薔薇色というわけではないが。重要なのは、チェがキューバで敬意を払われ愛され親しまれていること。そして私は百%キューバ人だ。もちろん父の母国アルゼンチンへの愛着はあるけれど。言い換えれば、私はラ米人、〈大なる祖国〉人でもあるが、何よりもまずキューバ人なのです」

▼チェ思想は今も必要

── 歿後半世紀経つのにチェ・ゲバラが世界的に評価されているのはなぜでしょう。

「キューバ革命での活躍が内外に大きく伝えられ、その時から有名になっていた。その後も正統的な大義のために戦い、その結果(死)に直面した。だから評価されるのだろう。革命家チェは倫理的で繊細で深く人間的でした」

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