[2018.10]特集:音楽とラジオとエッセイと 〜フロリディータで会おう

文●柳原孝敦

 2017年3月に一週間ほどハバナに滞在したときに気になることがあった。五分おきに、というと大げさだが、それだけ頻繁に「チャン・チャン」が耳に入ってきたことだ。言わずとしれた世界的大ヒットアルバム『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』冒頭の一曲だ。旧市街のレストランや酒場などにいると、こっちの店にもあっちの店にも流しの楽団がやってきて演奏を始める。楽団によってレパートリーの違いはあるが、決まって一度は「チャン・チャン」を演奏するのだ。こっちの店に楽団がいなくなると、あっちの店にいた一味がやってきて演奏を始め、そしてまた一度は「チャン・チャン」をやる。それ以前で最後にハバナを訪れたのは2003年だった。だいぶ前ではあるが、それでも既にアルバム版も映画版も『ブエナ・ビスタ』は知られていた。けれどもその当時はここまでの「チャン・チャン」ブームはなかったように記憶する。あくまでも個人的な記憶と印象だけれども、やはり米国との国交回復による観光促進の力は強いのだろうかと思った。「チャン・チャン」は嫌いな曲ではないが、こう頻繁にやられるといささか辟易したものだ。

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