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[2018.01]【連載 ラ米乱反射 #141】コスタ・リカの軍備廃止から69年 日本人が教訓とすべき立憲主義

文●伊高浩昭(ジャーナリスト)

 ジェームス・モンロー(1758〜1831)は米大統領だった1823年12月2日、連邦議会(国会)への施政報告・方針演説(いわゆる教書)で、「モンロー教義」を打ち出した。それから2017年12月2日で194年が過ぎた。またホセ・フィゲレス(1906〜90)を議長とするコスタ・リカ執政評議会が1948年12月1日、軍備を廃止してから2017年の同日で69年が経過した。米州でのこれら2つの歴史的出来事は密接に関連している。


▼モンロー教義

 南米北西部の独立の英雄シモン・ボリーバル(1783~1830)は1815年、「ジャマイカ書簡」で、「新世界で単一国家を建設する偉大な理想」を語った。1819年には「アゴストゥーラ会議」で、ベネズエラ、ヌエバ・グラナーダ(現コロンビア)、キト(現エクアドール)による「大コロンビア共和国」を建国した。ボリーバルは、ラ米全体を「大なる祖国」として統合する「(ラ米を主体とする)汎米主義」を唱えた先駆者の一人だった。だがボリーバルの汎米主義は、後に「(米国を中心とする)汎米主義」に乗っ取られてしまう。米国は19世紀半ばメキシコから領土の北半分を奪って両洋国家になったが、世紀末にキューバを属国化しプエルト・リコを植民地にしたころ、汎米主義(パナメリカニズム)をラ米分断支配と米州覇権のイデオロギーとして確立した。

 歴史を遡れば1823年4月、仏ナポレオン軍はスペインを侵略した。オーストリア、プロイセン(現ドイツの一部)、ロシア3帝国の神聖同盟は、この侵略を承認した。驚愕した英国は新世界との交易が侵害されるのを強く懸念、英海軍は大陸欧州列強によるラ米侵略を許さず、神聖同盟に対抗する国家同盟を結成する用意がある、と警告した。英政府はさらに米国に共同宣言発表を働き掛けたが、米国に拒否された。

 しかし結果的にジョン・アダムス米国務長官はモンロー大統領に対し、神聖同盟に対する米独自の宣言を発するよう進言した。それが「モンロー教義」となるのだ。モンローは演説で次のように語った。

「露帝国政府が駐米公使を通じて為した提案に関し、サンクトペテルブルク駐在の米公使に、北米大陸北西海岸における両国の権益について友好的に交渉するための全権と訓令が既に与えられている。同様の提案が露皇帝から英国政府にも為されている。この国益に関する議論と到達すべき合意における米国の権益に影響する一原則として、米州大陸は、既に獲得されている自由かつ独立した状態ゆえに、いかなる欧州列強の将来的植民地になるべき対象ではない」

「米市民は、大西洋西岸諸国人民の自由と幸福のため最も友好的な心情を抱いてきた。欧州列強の戦争に我々は一度たりとも参加しことはなく、そのような政策を持つこともなかった。我々の権利が侵害されるか著しく脅威に晒された場合にのみ応報するか、もしくは自衛準備を講じる。我々は、西半球の諸問題と大義によって結びつく」

「神聖同盟の政治制度は、米州諸国のそれと本質的に異なっている。列強諸国が自らの政治制度を西半球に拡張しようとするならば、我々はそれを平和と安全にとり危険なものと見なす」

「既存の欧州列強の植民地や領土については、我々は従来通り介入しない。だが我々が承認しているラ米諸政府に関しては抑圧や干渉を看過しない。新政府諸国の対スペイン独立戦争には中立を維持しつつ、同諸国を承認する。米政府が安全上、政策変更が不可欠と判断しない限り、このような政策を維持してゆく」

「欧州列強はスペイン内政に力で干渉した。我々は欧州列強のいかなる国に対しても干渉しない」

「スペインと新諸政府の間の力と資力を比べると、その地理的隔たりもあって、スペインが自国の制度を押し付けるのは不可能だろう。米国の政策は双方の関係に介入しないことであり、欧州列強もそうあってほしい」


▼パナマ会議

 大コロンビアの親米派の副大統領フランシスコデパウラ・サンタンデルとペドロ・グアル外相は、欧州列強に対抗するため「統合アメリカ」結成を訴えた。この汎米主義が、米国に利用されて、イスパノアメリカ(スペインからの独立諸国)の統合を目指すボリーバル主義のアンチテーゼになるのをサンタンデルは見抜けなかった。

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コスタ・リカ国旗を手に群衆に応える晩年のホセ・フィゲレス元大統領

 ボリーバルは、イスパノアメリカ新独立諸国の安全が米国の拡張外交やスペインの植民地奪回主義によって脅かされ始めていた1826年6月22日から7月15日までパナマ市で「パナマ国際会議」を開催した。外国による支配からの自衛策を探るための会議で、大コロンビア、メキシコ、中米連合州、ペルーが出席した。

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