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[2018.05]【連載】タンゴのうた 詩から見るタンゴの世界 第4回 マレーナ

文●西村秀人 text by HIDETO NISHIMURA

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 オメロ・マンシ作詞、ルシオ・デマーレ作曲の名曲「マレーナ」である。1941年の作品で、ヒットするとすぐ、この曲のモデルは誰かということが話題になった。しかし当のオメロ・マンシは10年後の1951年に44歳の若さで没するまでこの「マレーナ」について一切言及しなかった。

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Malena

 まず最初にあらわれた説は、オメロ・マンシと交友関係にあり、この曲をいち早く録音したアスセナ・マイサニではないかというものだったが、本人はこれを否定した。マンシとやはり親しかったネリー・オマールがモデルではないかという噂があり、後年本人も「マレーナは私である」と発言したが、オマールがマンシと個人的に知り合ったのは「マレーナ」発表後だと言われている。オメロの息子アチョ・マンシはメルセデス・シモーネがインスピレーションの源だったと推測しているが、これは客観的な根拠がない。

 マレーナが誰だったのかに関して最も説得力のある説を提示したのがオスバルド・プグリエーセの傑作「レクエルド」の歌詞を書いた詩人・ジャーナリストのエドゥアルド・モレーノで、1993年のインタビュー中で明らかにした。

 マレーナのモデルは芸名をマレーナ・デ・トレド(本名マリア・エレーナ・トルトレーロ)という歌手だった。隣国チリの出身で、1906年生まれ、父親がスペインの名誉領事だった関係で南米諸国を小さな時から転々とした。いつごろから歌手として活動し始めたかは定かではないが、1929年に短期間しか存続しなかった幻のエルビーノ・バルダーロ=オスバルド・プグリエーセ六重奏団の地方公演に歌手として帯同した(モレーノはその際にマレーナと知り合っている)。バルダロ=プグリエーセ楽団解散後、マレーナはブラジルへ活動拠点を移したという。

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Malena de Toledo

 オメロ・マンシが彼女と出会ったのは1941年の夏、所用でメキシコを訪れた帰り、トランジットで寄ったブラジル、サン・パウロのキャバレーでマレーナ・デ・トレードの歌を聞いたという。そこでインスピレーションを受けたマンシは帰国後すぐに歌詞を仕上げ、ピアニストのルシオ・デマーレに曲をつけるよう詞を手渡した。(デマーレがブラジルからの手紙で歌詞を受け取ったという説もある)

 デマーレは当初歌詞を上着のポケットに入れたまましばらく忘れていたが、取り出して歌詞を見るとみるみるイメージがわき、ものの15分で曲を完成、歌詞も曲も一度も書き直す必要すらなかったという。

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