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[2020.02]北欧映画を発信して10周年 トーキョーノーザンライツフェスティバル 2020

文●細川典子 text by NORIKO HOSOKAWA

 北欧5ヵ国の映画を紹介している「トーキョーノーザンライツフェスティバル」は今回で10周年を迎える。日本国内でもこの10年で劇場公開の作品数も増加し、CS放送や配信の普及などにより北欧映画に触れる機会は格段に増えている。しかしながら、それでも追いつかないほど、新しい才能が次々に生まれ、また、北欧映画がそこまで注目されていなかった時代にも良質な作品はたくさん制作されている。その中から厳選した作品は、例年好評を博している。

 まずは、10周年記念特別企画「スペシャル・アンコール」として、『ショー・ミー・ラヴ』をデジタル・リマスター版で上映する。第1回開催時にスウェーデンのルーカス・ムーディソン監督を特集し、その際に上映した1998年製作の長編デビュー作。田舎町で鬱屈した日々を過ごしていた正反対のふたりの少女の同性愛を鮮やかに描き、世界中の映画祭で絶賛された。ロシアのガールズ・ユニットt.A.T.u.のコンセプトは本作に着想を得ている。

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『ショー・ミー・ラヴ』

 今回は、北欧映画界の重鎮たちと、新進気鋭の監督にスポットをあてる。

 昨年『ハウス・ジャック・ビルド』が公開されたデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーの『メディア』(1998)を上映。『裁かるゝジャンヌ』、『奇跡』などで知られる巨匠カール・Th・ドライヤーがギリシャ悲劇「王女メディア」を脚本化した企画を、彼の死後、彼を敬愛するトリアーが新解釈を加えて実現。デンマーク映画史における重要な作品である。

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『メディア』

 また、フィンランドを代表する『モロ・ノ・ブラジル』のミカ・カウリスマキ監督と『希望のかなた』のアキ・カウリスマキ監督の原点とも言えるファン垂涎の短編2作品を併映。『嘘つき』(1981)は、飲み代をなんとか稼ごうと考えたふたりが、自分たちの最低な生活を映画にしようと思い立ち、兄のミカが監督を、弟のアキが脚本と主演を務めた作品。嘘つきの主人公が、運命の女の子を見つけてデート代を工面するために奔走する物語で、ヌーヴェル・ヴァーグの影響が窺える。もう1作品は、兄弟で脚本を手掛けた、文化喪失後の都市部で生きる若者を描いたSF『ジャックポット2』(1982)。

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