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[2018.07]ブラジル 特殊音楽事情 〜「ラテンアメリカノイズの旅」(2018年5月号掲載)の続編レポート

文と写真●大友良英 text & photos by OTOMO YOSHIHIDE

 先々月号(2018年5月号)で、昨年の11月から12月にかけて中南米各国に行ってきた話を書いたけど、今月はさらにぐっと掘り下げてわたしの見たブラジルの特殊音楽事情を少しだけ。といっても「特殊音楽」なんてジャンルがあるわけではないので念のため。普通はあんまり取り上げられることのない音楽くらいの意味で受け取ってくれればいいかな。

 ブラジルにもノイズやら即興をやる人たちが結構いるなんて情報が少しづつ入ってきたのは2000年代も後半に入ってからだったろうか。情報源は欧州の即興系のフェスに集まるミュージシャンや観客からで、そんな中でわたしが最初に知り合った即興音楽家は、オーストリアのフェスで観客として来ていたリオデジャネイロのベーシスト、フェリペ・ゼニーコラ(Felipe Zenicola)だった。数年前のことだ。「あなたの音楽に興味を持ってる人はブラジルにも沢山いるし、もし可能ならぜひ来て欲しい」そんなことを言われたと思う。今回は文化庁の援助とともにこのフェリペにも動いてもらって、ブラジル各地でのコンサートが実現することになった。

 最初に行ったサンパウロで出会ったのが、現地のノイズ系の即興シーンを率いるギタリストのマリオ・デル・ヌンジオ(Mário Del Nunzio)。その彼の企画するフェス〈FIME〉でわたしは〈ALTHIMA〉という即興トリオとの共演することになった。メンバーはコントラバスのアレックス・ヂアス(Alex Dias) ドラムスのマルシオ・ジブソン(Marcio Gibson)に自作エレクトロニクスのチアゴ・サレス(Thiago Salas)。このトリオが本当に素晴らしく、何のリハもせずいきなりの共演だったにも関わらず、僕らは何年も一緒にやってるバンドでもあるかのような演奏になったのだ。さらにこのフェスで出会ったメキシコの変形サックスを演奏するマルティン・エスカランテ(Martin Escalante)が、もうとにかくわたし好みで素晴らしかった。サックスといっても、そこにはジャズの名残は一切なく、徹底してノイズ楽器と化していて、思わず会場にあった彼のアルバムを買い占めてしまったほどだ。

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右上 Martin Escalante/ 右下 ベロオリゾンチにてHenrique Iwaoとの共演/ 左上 Felipe Zenícola/ 左下 FIMEでのALTHIMA

 次いでの共演を企画してくれたのは同じくサンパウロで古くから即興演奏をやってるギタリスト、パウロ・アルトマン(Paulo Hartmann)。彼の仕切りでサンパウロ即興シーンの先駆的パーカッション奏者の長老パンダ・ジアンフラッティ(Panda Gianfratti)やベロオリゾンチの自作楽器奏者マルコ・スカラサッティ(Marco Scarassatti)とレコーディングやセッションを。とりわけ弓を用いてミニマルかつ静謐な演奏をするパンダの演奏が素晴らしかった。〝ブラジル人というとすぐにビートを出すもんだって思われがちだけど、わたしは違うからね〟彼のそんな言葉が忘れられない。サンパウロとベロオリゾンチの即興シーンはマルコや日系人の自作エレクトロニクス奏者のエンヒッキ・イワオ(Henrique Iwao)らの活動もあって、かなりの行き来がある上に情報も共有されているようで、マルコの招きで彼が教鞭をとるミナス・ジェライス州立大学(UFMG)で講演を行った際には多くの学生が詰めかけわたしのこれまでの活動について質問攻めにあったほどだった。

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左:右からArto Lindsay, Otomo Yoshihide, Claudia Brito, Thiago Da Serrinha/右:サンパウロ、レッドブルスタジオでのPanda GianfrattiとMarco Scarassatti

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