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[2017.03]レアンドロ・カブラルのクラシカルなカーニヴァル

サンバやイジェシャーのようなパーカッショナルなリズムに最小限のアレンジを施す……。最新作では意を突くアプローチで“沈黙”を切り取って魅せたレアンドロ・カブラル。ブラジルのインストゥルメンタル新世代において傑出した道を歩む若きサンパウロ出身のピアニストに訊く。

文●ヂエゴ・ムニス/翻訳●宮下ケレコン えりか
texto por DIEGO MUNIZ / tradução por ERIKA MIYASHITA KELECOM

 レアンドロ・カブラルは33歳にして作曲家としてデビューを飾った。マリア・ヒタやセウ・ジョルジ、ホベルタ・サー、エヂ・モッタなど、MPBの大物アーティストから信望を得る彼だが、その2作目となる最新作アルバム『Alfa』がリリースされた。本作では全10曲中7曲がオリジナルで、これまでのピアニスト/アレンジャーの顔に加え、作曲家としての才能を発揮している。

 アルバムはサンパウロの劇場、テアトロ・アルファにてライヴ収録が行われた。トリオを務めるのはコントラバスのシヂエル・ヴィエイラとドラムのヴィトール・カブラル。ブラジル特有のリズムとジャズ即興のフュージョンが美しい。しかも〝ブラジルのリズム〟は、イジェシャーやヴァッシといった馴染みの少ないものが選ばれていて、本作をより一層際立たせている。

 現代のブラジル音楽シーンにおいて飛び抜けた存在である彼が、これまでの経歴について本誌のために特別に語ってくれた。特に、劇場でのライヴ収録でありながら〝聴衆がいない空間〟にこだわった新作の経緯について聞いた。

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—— 新作『Alfa』を、無人の劇場で録音するアイデアはどのように生まれたのですか?

レアンドロ・カブラル 劇場での生演奏にこだわりたかったんだ。でも同時にスタジオで収録する良さも取り入れたかった。アルバムのコンセプトは無為自然のタオイズムと、深淵と沈黙だ。沈黙を音で表現することって、すごく逆説的じゃない?だから、大きなしかも空っぽの劇場で録音することに意味があると思った。劇場を選んだもう一つの理由は、僕自身のクラシック音楽に対する関わり方の問題。クラシック音楽のアルバムは劇場で収録されたものが多くて、それって、室内のアコースティックな音響効果を狙ったものだろう? それこそ作品の本質に関わる大切な要素なんだ。

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