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[2017.05]ジェーン「私の幸運は、ノブ」〜ジェーン・バーキン&中島ノブユキ インタビュー

中島ノブユキのオーケストラ・アレンジをバックに ジェーン・バーキンがセルジュ・ゲンズブールを歌う 『シンフォニック・バーキン&ケンズブール』

文●松山晋也

 ジェーン・バーキンが、オーケストラをバックにセルジュ・ゲンズブール(以下SG)の作品だけを歌ったアルバム『シンフォニック・バーキン&ゲンズブール』を発表した。09年の『ライヴ・アット・パラス』から8年ぶりであり、スタジオ録音アルバムとしては08年の『冬の子供たち(Enfants d'hiver)』から9年ぶり。SG作品だけで構成された作品としては、02年の『アラベスク』以来なんと15年ぶりということになる。3月に発売された(日本は4月末)欧米諸国のメディアでは、既にかなりの高評価を受けており、ジェーン自身もまた「『アラベスク』と並ぶ私の代表作になった」と自賛しているが、実際私もそう思う。素晴らしい作品なのだ。

 そして、この傑作の最大の貢献者は、なんといってもすべてのオーケストラ・アレンジを担当した中島ノブユキだろう。SGの楽曲そのものの魅力を新たな角度から抉り出した中島のオーケストレイションがあったからこそ、ジェーンも、長年歌い続けてきたSG作品との距離感を更新し、より冷静かつ客観的なスタンスで歌えたのではないか。ジェーンはSGが91年に亡くなった後も、アルバムやライヴでずっとSG作品を歌ってきたが、その表現にはどこかしら、SGにすがりついて涙する少女といった趣が感じられた。もちろん、それもまたジェーンだけに許された特権的表現であり、けっしては良し悪しの問題ではない。が、今回の新作によって、一人の歌手としてのジェーン・バーキンが大きく成長し、また、SG作品が更に輝きを増したのは間違いない事実だと思う。

 というわけで、先日ジェーンと中島に別々におこなったインタヴューでの発言を交錯させながら、この素晴らしい新作について説明したい。

ジャケXXX

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