[2018.10]特集:音楽とラジオとエッセイと 〜ラジオの大国にて

文●旦 敬介

 僕がブラジルに一番長く住んでいた1990年代前半は今から考えると、音楽のメディアの大転換の真っ最中にあった。販売されている音楽のメディアの中心はブラジルでは当時はまだLPレコードで、多くが同時にカセットでも販売されていた。LPレコードのカバーの裏の隅のほうには、"Disco é cultura"(レコードは文化)という決まり文句(著作権侵害への戒めだったのか)とともに、「カセットでも販売中」とも印刷されていて、カセットのことがしばしば「K7」(カセッチ)と省略されているのが洒落ていた。これが90年代の半ばになって、だいぶCDが普及してくると、LP、CD、K7と表記されるようになっていくのである。でも僕が住んでいたのは貧しい人の多いバイーア州サルヴァドールの中でも、まだゲットーだったペロリーニョの一角だから、CDが身近なものになるのはだいぶ遅かったように思う。

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