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[2019.06]【連載 それでもセーヌは流れる 125】ランボーのように生き果てた女 リズィー・メルシエ・デクルーの軌跡

文●向風三郎

1) リズィー・メルシエ・デクルー『プレス・カラー』(1979年)

リズィー・メルシエ・デクルー『プレス・カラー』(1979年)


 2015年10月20日(バタクラン・テロ襲撃事件の3週間前)、パリ、オランピア劇場のステージでパティ・スミスは沈痛な面持ちで目を潤ませながら「エレジー」(1975年彼女のファーストアルバム『ホーセズ』の最終曲)を歌い、葬送曲のようなピアノコードに乗せて「私たちの友人たちが今日ここにいないことが本当に悲しい」と語り、ゆっくりとそれらの名を読み上げていき、観衆はそのひとつひとつにオマージュの拍手喝采を捧げていった:ジェームス・マーシャル・ヘンドリックス、ジム・モリソン、ジャニス・ジョプリン、ブライアン・ジョーンズ、ジョー・ストラマー、カート・コバーン、リズィー・メルシエ・デクルー。この最後の名が告げられた時、喝采は止み、重い沈黙が流れた。


2)シモン・クレールによる評伝本『リズィー・メルシエ・デクルー/金環食』

シモン・クレールによる評伝本
『リズィー・メルシエ・デクルー/金環食』

 これはシモン・クレールによる評伝『リズィー・メルシエ・デクルー/金環食』(2019年3月プレイリスト・ソサイアティー刊)の序章(p17)に書かれた一部を抄訳したものである。その中にあるオランピアに流れた沈黙というのは、今やフランスでもリズィー・メルシエ・デクルーというフランス女性アーティストはほとんど記憶されていないということ、そしてこの彗星のように夭折したロックヒーローたちと同列とは誰も思っていないということ。だがパティ・スミスはこのフランスの親しかった友のことを忘れはしない。二人を結びつけたもの、それは19世紀の少年詩人アルチュール・ランボー(1854〜1891)であった。2017年3月、パティ・スミスはその倉の中で少年ランボーが詩作をしていたと言われる北フランス・アルデンヌ地方の農家を買い取るほどのランボー崇拝者として知られる。

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