[2021.01]マラドーナと音楽(後編)
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[2021.01]マラドーナと音楽(後編)

文●フアンホ・カルモナ 

Text by Juanjo Carmona

10番の夜

 「10番の夜」はイタリアのRAIで放送されていたテレビショーで、2005年にマラドーナがアルゼンチンの放送局Canal 13のディレクターの協力を得て制作に至った。マラドーナが世界的スターと対談し、好きなことをやるという実に奔放なものだった。その中でも特にマラドーナが好んだのが歌。番組内でカルロス・ビベスの「Voy a olvidarme de mi(俺のことは忘れよう)」を披露したり、チャーリー・ガルシア、リカルド・アルホナ、ロス・ラトネス・パラノイコス、ホアキン・サビーナのコーラスを務めた。この頃にもアルバム制作の話は持ち上がったが健康問題と中毒が影を落とした。アルゼンチンロックの父で生涯ロックスターであり続けるチャーリー・ガルシアをマラドーナが心から敬愛しているのも決して不思議ではない。

 その後もマラドーナはあらゆるタイプのステージや楽屋に顔を出し、ハード・ロック・カフェ、ザ・ロクシィ、プエンテ・ミトレ、ラ・ディオサ、ラ・カソーナ・デ・ラヌースといった歓楽街の常連となった。その当然の結果として次第に健康は蝕まれていったが、一方でボノやキース・リチャーズらと友好関係を築くという充実の日々を過ごした。

 健康問題を抱えながらUAEやメキシコのシナロアで監督業に携わるようになり、夜の街からは足が遠のいていくが、チーム内で娘より若い選手たちとの交流を通じて若者の音楽に親しんだ。娘ダルマの執拗なすすめもあり、2014年にはトロピカルグループ、アポロと「Gritándole al viento(風に叫べば)」のレコーディング、ソレダーやルシアーノ・ペレイラといった人気歌手たちとも絆を深めていく。

 硬膜下血腫の手術の直前、ヒムナシア・イ・エスグリマ・デ・ラ・プラタの監督を務めていた頃には「ダンスを止めることなんてできない」とクンビアグループのロス・パルメラスとステージでの共演希望を表明していた。その後、60歳を迎えてすぐに死を迎え、その想いは永遠に持ち越されることとなった。

●音楽を脚にこめて

 魔術的なプレイによってサッカー界の大使として世界中の漫画や小説、映画、詩、楽曲にインスピレーションを与えた。最初に世界的に知られたのがマノ・ネグラによる「サンタ・マラドーナ(聖マラドーナ)」で、その後数曲がマラドーナに捧げられることになる。その10年後マヌ・チャオがエミール・クストリッツァ監督の映画用に「俺がマラドーナだったら」を発表し、世界を驚かせる。ホアキン・サビーナは『19 días y 500 noches(19日と500夜)』の中で「マラドーナとマファルダ」を、アルゼンチンロック界からはフィト・パエスは「Dale alegría a mi corazón(心に悦びを)」、アンドレス・カラマロは「Maradona」、チャーリー・ガルシアはマラドーナがドラッグの使用で逮捕された日の午後にクラウディオ・ガビスとの共作で「Maradona Blues(マラドーナ・ブルース)」をテレビで発表した。

 アルゼンチンでは国家的レベルで国民に焼き付いている曲がここに上げたもの以外に2つある。人気ロックバンド、ロス・ピオホスの「Maradó(マラドー)」とパソドブレとポルカを組み合わせたクアルテートのバンド「La Mano de Dios(神の手)」だ。

誰もが歌う 
マラドー、マラドー 
神の手が生まれた 
マラドー、マラドー
みんなに喜びの種を蒔き
この地に勝利をもたらす 

ロス・ピオホス/マラドー  

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