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青葉市子 〜原子のようにオリジナルで、孤独なほどの個性

文●成田佳洋 text by YOSHIHIRO NARITA

 アルペジオ中心のナイロン弦ギター演奏と歌のみ、というスタイルをデビュー作から貫き、6作目となる新作『qp』のリリースを迎えた青葉市子。時折カヴァー楽曲を取り上げつつも、基本的には自身の楽曲を他の演者の力を借りずに演じきってしまうその姿は、まさに生まれついてのシンガーソングライター。ミニマルで、不変で、豊穣であり誰にも似ていないその音楽の在り方を思うとき、いつもジョアン・ジルベルトを想起する。ジョアンの音楽に似ていると言いたいのではなく、原子のようにオリジナルで、孤独なほどの個性という意味だ。

 ここ8年程で共演してきた錚々たるミュージシャンたち(細野晴臣、坂本龍一、コーネリアス、三宅純、等々)との仕事をきっかけに彼女を知ったリスナーは多いだろうし、キケ・シネシ、カルロス・アギーレ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートらと青葉市子が共演したフェスティバル〈sense of quiet〉の一幕を覚えておいでの本誌読者もいることと思う。後者が開催された2012年以降、彼ら南米の音楽家たちのコミュニティで〝Ichiko Aoba〟の名前を聞くことも少なくない。昨年アルゼンチン・ツアーを大成功させたというコトリンゴのように、今後南米で、世界でブレイクする可能性を秘めた音楽家だと思う。

—— デビュー作から通して聴き直してみて、その当初から現在のスタイルがすでに確立されていることに改めて驚かされました。アルペジオ主体のギター+歌、という表現スタイルにもっとも影響を与えた人や出来事について教えてください。

青葉 命を切りとって奏でる歌唄いの人、そして音楽に限らず、演劇や小説や映像のフィールドで出逢ったさまざまな人たちによって、少しずつ私は形成されて来たのだと思います。はじめから変わらないことは、呼吸音が聴こえる余白や、残響のひとときが好きなことです。それが、ストロークではない、アルペジオという奏法に繋がっているのかもしれません。鉄弦ではなくナイロン弦ということも大きいと思います。ナイロン弦の響きは声の響きと近くて、どこからどこまでがギターで声ということを忘れます。

—— 山田庵巳作品のカヴァーが今作でも2曲収録されていますね。自らの師でもある、とのことですが、青葉さんにとってどのような存在ですか?

青葉  4thアルバム『0』につづき、『qp』では〝水辺の妖精〟と〝羊のアンソニー〟をカバーしています。

 私にとって山田庵巳さんは、新しい言語を与えてもらった親、または核のような存在です。山田さんに出逢ったのは15歳のとき。バンドのライブを観に行くうちに、別名で弾き語りをされていることを知って、調べてみたらぴたりと身体に合うような感覚があり、当時存在していた山田さんのホームページにアップされていた45秒ずつの楽曲を一つ一つコピーして弾くようになりました。それが17歳の時。コミュニケーションに手こずる学生時代でしたが、弦に触れて声を出すことが救いのような感覚で、起きている間はほとんどギターを持っていました。学校帰りに京都から東京まで向かって、オープンマイクの日に一緒に出演させてもらったりしているうちに、自分の曲も書いてみたらどうかと周りから言われるようになり、もともと書いていた物語を詩に変えて、〝ココロノセカイ〟と〝不和リン〟を書きました。私の弾いている山田さんのカバーはすべて17歳の時に聴き取ったバージョンのままです。

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