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[2019.09]空間現代

文●松山晋也 text by SHINYA MATSUYAMA 

まだ8月ではあるが、空間現代の新作『Palm』は、今年出た日本のポップ・ミュージック・アルバム中最大の問題作の一つになるのかもしれない。スタジオ録音のフル・アルバムとしては『空間現代』(09年)、『空間現代2』(12年)に続いて7年ぶりの3作目。CDではなLPとデジタルによるリリースだ。

 私は最初聴いた瞬間ツイッターに「トニー・コンラッドがモールス信号技師になったような……」とつぶやいてしまったのだが、ズレとグルーヴが合わせ鏡のようになった摩訶不思議な世界だ。彼らならではのいびつなミニマル・サウンドは明らかにこれまでとは違ったレベルへと深化している。

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Photo by Katayama Tatsuki

 野口順哉(ギター/ヴォーカル)、古谷野慶輔(ベース)、山田英晶(ドラム)の3人によってバンドが東京で結成されたのは2006年。3年ほど前に拠点を京都に移し、ライヴ・スペース「外」(そと)を運営しながら活動を続けてきた。

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