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[2019.04]ブラジルフィールドワーク #11 ファヴェーラから世界に言葉を放つ ジゼリ・マルチンス

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO

 1月末から2週間ほどピースボートに乗ってきた。2年ぶり8回目の旅の行程は、いつものようにケープタウンから大西洋の向こうのリオデジャネイロまで。水先案内人と呼ばれる船内講師として、次の寄港地ブラジルについてレクチャーをした。今回の旅は若いアクティビストの友人と一緒だった。リオデジャネイロ市北部の巨大ファヴェーラ・マレーで生まれ育ったジゼリ・マルチンス。彼女にどうしても乗ってもらいたくてピースボートに推薦したのだった。

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南半球航路を世界一周中のピースボートで
ケープタウン〜リオデジャネイロ間を水先案内人として乗船した。
「船旅は初めて」とジゼリはちょっと緊張ぎみ。


 船内でジゼリは3回の講座を担当した。内容は、マレーの成り立ち、マレーの住民団体が展開する様々なプロジェクト、そして彼女たちが始めた世界各地の貧困地域や紛争地との国際交流の取り組みについて。私は自分自身の講座をこなしつつ、ジゼリの講座の企画準備と当日の通訳も引き受けた。彼女の語る言葉には真に迫る力がある。彼女の話は乗船客にとって、格差、貧困、不寛容が広がる日本社会のありようにも引き寄せつつ胸に響くものだったのではないかと思う。


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