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[2018.04]連載 太平洋の向こう岸からの手紙 #10 『影』

文●フアン・フェルミン・フェラリス

〈時々私は影に従う/時々ついてくる/ちっぽけな影よ もし私が死んだら/誰とともに歩むのだろう〉
フリオ・サントス・エスピノサ作「私の影へのビダーラ」

 最初に影について考えたのは、知らせがあった日でした。ちょうど音楽学校の中にあるレコーディングスタジオでピアニストとしての最初のジャズアルバムを準備していたのですが、そこは幼い頃に何度か通った場所でした。そこでの私はとてもいたずらっ子だったのですが、それはまた別の話です。一番美しい記憶は、授業を抜け出して公園で演奏したこと。学校の外でポピュラー音楽を学んでいた時代、とても大事な日々でした。歌とギターを始めたのはその時の友人が教えてくれたおかげだったからです。

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@MARCERO FERRARIS

 数年後に私は再び同じ扉をくぐり、その公園に戻りました。そこで友人の一人である同級生の死を伝える小さい張り紙を見た時から、私にはこの曲を録音する心の準備がありました。その日はとても特別な日で、何が起こっているのかわかりませんでしたが、録音をしなければなりませんでした。そこで書かれていたのは、長い間見ていなかった友人でした。私はすぐに彼の親友である女性に電話しました。この知らせが私に影について考えさせたわけではないですが、彼は自分自身を離れることに決めていたのです。

 そのとき、クリバスを代表する曲を書いていました。それがこの曲「影」で、これは彼とその家族に捧げています。多分子供だったので、大人になって他人の決定を理解することに価値を持たなくてはならないことを知りませんでした。決して誰かが一人でなぜ去ると決めたのか知り得ないでしょう、そしてなぜ我々が一人で残されたかも。知ってることは、我々はまだ立ってままであることと、それに耐えることができるということ。その週にこの歌詞を書きました。

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