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[2017.02]【連載 TÚ SOLO TÚ #202】息子ブレント・フィッシャーが指揮、最新作がリリース クレア・フィッシャーのプレイが復活!

文●岡本郁生

 クレア・フィッシャーといえば、ラテン・ファンの口からはすぐに「モーニング」という曲名が飛び出してくるだろう。長らく西海岸を拠点に活動し、カル・ジェイダーとのコラボでも知られている名ピアニストにしてアレンジャーだ。とはいえ、だいたいはそのへんまでの認識で止まってしまうのではないだろうか? 実は2012年に83歳で亡くなっているのだが、彼が“参加”したニュー・アルバムがリリースされていることをご存知だろうか?

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残念ながら2012年に亡くなったクレア・フィッシャー

 昨年11月に発表された『インテンソ!』というのがそのアルバム。クレア・フィッシャー・ラテン・ジャズ・ビッグ・バンド名義の作品で、音楽監督をつとめるブレント・フィッシャーはクレアの息子である。

 収録された10曲中6曲がクレアのオリジナル曲で、アレンジは、クレアとブレントが担当、そしてなんと、6曲でクレアのプレイが登場しているのである。詳しい手法はわからないが、おそらく、彼が生前に残したプレイにビッグ・バンドが演奏をあとからつけた、ということなのだろう。中でも、「オ・カント」では、演奏だけでなく、ジョージ・ベンソン風に、キーボードのソロに乗せてご機嫌なアドリブのスキャットも披露しているのだ。

 オープニング曲は、ディジー・ガレスピーの「アルゴ・ブエノ」(別名「ウッディン・ユー」)。クレアはガレスピーのアルバム『ア・ポートレイト・オブ・デューク・エリントン』(1960年)のアレンジを手がけたほか、65年にはガレスピーの代表曲から取った『マンテカ!』というアルバムもリリースしている(ここに「モーニング」が収録)ほど、親密な関係だった。アフロ・キューバンをベースにしたラテン・ジャズ・チューンで、グルーヴィーなリズム、各々のソロももちろん素晴らしいが、何といっても、15パートのホーン・セクションを使いこなしたという変幻自在なアレンジが、彼の面目躍如というところだろう。

 なにしろ、ハービー・ハンコックが「ハーモニーのコンセプトにおいてもっとも影響を受けたのがクレア・フィッシャー」といっているぐらいなのだ。「彼がいなければ、私はいなかった」とまでいい切っているのである。

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