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[2020.05]「月刊ラティーナ」と 歩んだ26年間...

文●宮沢和史 texto por Kazufumi Miwazawa

 こちらの知識欲を刺激する文章に出会うと心が高鳴り、滋養のある食事を楽しんでいるような、全身に慈雨を浴びているような気分になるものだ。しかし、単に正確な情報を得ていたいだけというわけではない。それだったら時刻表か電話帳を読んでいればいい。そこに書かれている一行一行、一言一言の事項を学び、吸収する喜びと同時に、いや、それ以上に、その一行一行、一言一言と出会った直後に自分自身が何かに〝気づく〟ことが連続することで生まれる爽快感、到達感、満足感、を得る喜びこそが文章を読む最大の目的である。一方的に情報を伝達されるだけではなく、読む側が警戒心を解き、その文章を全身で受け入れ、受け身から徐々に能動的になり、いずれ自身の力で覚醒し、書かれていること以上に掘り込んでいく、そうさせてくれるのが優れた文章ということになるのだと思う。近頃、文章を片手、もしくは人差し指でスクロールしながら読むことが増えたが、というか日常ではほぼそのスタイルになったわけだが、たいてい、途中にいくつも載せてある広告を読ませるために構成されていて、あわよくば間違えてそこにタッチさせてしまうように仕組んであるから、文章がダラダラと長いし、行間がガランとしていて、なかなか進まず、こちらの知識欲が満たされるだいぶ前に萎えてしまい、閉じてしまうことも多い…… 現代のネット社会には大変窮屈さを感じる。そもそも文章なんて白い紙に黒いインクで象形から派生した記号が並べてある以上でも以下でもない。だがそこには、読み手が想像力を何十倍にも膨らませていく魔法がかけられている……。

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