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[2019.10]予備選ショックにもめげず、史上最高に熱く燃えた今年のタンゴ・フェスティバル&世界選手権!

文●本田 健治/写真●本田健治、宇戸 裕紀 他

text by Kenji Honda / photos by Kenji Honda, Hironori Uto / fotos oficiales

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観客数、出場者数共に過去最高!

 真夏の日本から真冬のブエノスアイレスに渡ると、寒さが極端に身にしみる。が、到着後、市のタンゴ・フェスティバル&ムンディアルの事務所に電話した途端、寒さが吹き飛んだ。今年の世界選手権はピスタ部門467カップル、ステージ部門160組と過去最高となっているという。マクリが市長〜大統領になってからの、タンゴフェス&ダンス世界選手権の盛り上がり方は凄まじい。いろいろな意味でこの国を世界水準に、という大統領の思いは、インフラ整備、文化活動の興隆など多岐にわたって顕著に結果を出しているが、一方で、当初予定した海外からの投資が思うようには伸びず、借金とその返済で緊縮財政も余儀なくされて、庶民の生活に跳ね返る。。タンゴのファン最大の楽しみであるミロンガだって、入場料が安すぎたとはいえ庶民の懐を直撃していると聞く。しかし、この8月のタンゴ・フェスティバルと世界選手権は市の主催とあってすべてが無料。だからもの凄い観客申込者数、加えて世界からの出場者数もまたも過去最高、緊縮財政で運営のスタッフも減員され、悲鳴も聞こえる。


より市民に密着したフェスティバル!

 さて、フェスティバルは8日から、選手権は12日から始まる。フェスティバルは、ブエノス中の劇場や会場で毎日いくつものイベントが開催されるし、ウシナ・デル・アルテ(アートの発電所)の大ホールで開かれる選手権の方はこれだけの参加者数を捌くわけだから予選だけで4日間、朝から晩まで連続して行われる。予選を勝ち抜いたカップルが、17日ピスタ部門109組、18日ステージ部門59組が、それぞれウシナの大ホールで準決勝、更に勝ち抜いたカップルがブエノスアイレス最大級のイベント会場ルナパーク・スタジアムでの20日ピスタ40組、21日ステージ20組の決勝へと駒を進める。フェスティバルも選手権の合間に行われるショーも日本のファンからすると仰天のショーが街中に溢れる。しかも、ウシナの数あるスペースでは、著名な映画俳優も参加してのミロンガやダンス教室、タンゴの写真展までタンゴづくしだ。土日や決勝の日となると、ウシナもルナパーク(推定7千人収容)もタンゴ・ファンで溢れかえる。

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 まずはカルロス・ガルデル文化スペースで行われた「フェスティバルで歌おう!」へ。タンゴを歌いたい者は誰でも参加できる気軽なイベントだが、司会は著名なシルビオ・ソルダンとマリアーノ・モーレス、エルネスト・フランコの楽団で歌った歌手アルベルト・ビアンコの案内で、全く素人の子供たちから歌自慢の老人までがトニー・ガジョ&オラシオ・バルソラのギター伴奏で歌う。昨年はこのイベントから10才の女の子が喝采を浴び、ルナパークの決勝のステージで歌を披露できた。まさにタンゴの原石を探る素晴らしいイベントだ。

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 続いて、5月25日文化センター。この劇場は、古いヨーロッパ・スタイルの八百屋舞台を持つ由緒ある劇場だが,長い間放置されていたものを,選手権を始めた当時の市文化長官(後に内閣副官房長官)グスターボ・ロペスの提案で改装、再開した有名な劇場で、今ではこの劇場からは衛星で世界を繋ぐ装置も完備しているのだとか。ここでは「ガルデルはここで歌った!」というタンゴ・ミュージカル。ここは、ガルデルが飛行機事故で亡くなる約1年前の1934年9月10日に、ソルサル・クリオージョ(ガルデルの別名)が歌った歴史的な劇場でもある。このエピソードをモチーフに、現代の著名俳優たちが、なんとネストル・マルコーニ指揮の市立タンゴ楽団の演奏で歌い、演じるという舞台。市立タンゴ楽団というと、昔は居眠り演奏で有名だったが、マルコーニが指揮に入って完全に蘇らせた楽団だ。マルコーニ指揮の時の楽団員の目が全く違う。彼がこの国の音楽家に敬愛される所以だ。


ファン垂涎の豪華イベントが続々!

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 他にも刮目のイベントが続々。やはりオープニングを飾ったセステート・マジョールとアメリータ・バルタール、センテージャ文化センターで開催されたコロールタンゴの演奏する特別ミロンガ、キンテート・レアルの「60年」、エステバン・モルガード・クアルテート&マリア・グラーニャ、エルネスト・フランコの「90年(エドゥアルド&グロリア出演)」、フランスから帰国したモサリーニのトリオ、すっかり元の力強い声を取り戻したラウル・ラビエ…… この数倍のイベントがほぼ毎日どこかの劇場で行われる。他にも、新たなタンゴ・ファンのためにタンゴダンス教室も至る所で開催される。また、タンゴゆかりの聖地アバスト、サンテルモを中心に、それぞれの地区のタンゴ人が集うイベントの数々を、ポロ・アバスト(昔の市場で現在のショッピングセンターの中や、ガルデル博物館等で開催)、ポロ・サンテルモ(サンテルモ市場やマルガリータ・シルグ劇場などで開催)の名前で、市民に身近な雰囲気で実施する。他にも、市内35箇所のスペースで特別ミロンガが開催される。今年は特にイベントの数が多いが、これを企画し、実行に移したのがガブリエル・ソリア国立タンゴアカデミー会長と、総合プロデューサーのフアンホ・カルモーナ、市のすべてのイベントを取り仕切るシルビア・ティッセンバウム女史の3人だが、その3人でほぼすべての会場を巡回しながら確認する。気の遠くなるような仕事量をこなしながら大成功裡に導いた。敬服。

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