[2020.08]若手オルケスタの台頭にみるタンゴの復興
文:西村秀人(PaPiTa MuSiCa)&清川宏樹&宇戸裕紀
ここ15年ほどタンゴの若手ミュージシャンを中心としたオルケスタ編成の楽団(ここでは6人編成以上とする)の活動が目立っている。(以下本稿でオルケスタ・ティピカをO.T.と省略する)
それ以前、仕事場の制約などによる経済的な理由から大編成の維持は公共機関のバックアップによるものや、タンゲリーア出演のために限られていた。しかしここ15年ほどでオルケスタの数は増加、その中心は20~40代の若手演奏家である。全体を見渡すと、主に4つのタイプがあると思われる。
まず第一は1990年代後半から起こって来た若手による伝統的な演奏を見直す傾向を反映したグループで、イグナシオ・バルチャウスキー(コントラバス)やラミロ・ガージョ(バイオリン)らにより1996年に結成されたオルケスタ・エル・アランケ、オスバルド・プグリエーセのサウンドを現代によみがえらせることを目指し2001年から活動を開始したO.T.フェルナンデス=フィエロ(それ以前の数年間はフェルナンデス=ブランカ)が先駆である。イグナシオ・バルチャウスキーの提唱でタンゴ学校オーケストラ(オルケスタ・エスクエラ・デ・タンゴ)が設立され、第1期生をエル・アランケのメンバー中心でスタートし、現在まで継続、内外のタンゴ界で活躍する数多くの若手ミュージシャンを創出し続けている。一方フェルナンデス=フィエロ楽団も一種のミュージシャン共同体として機能し、O.T.インペリアル、O.T.ラ・フルカ、O.T.セルダ・ネグラ(その後のO.T.アグスティン・ゲレーロ)、O.T.ラ・ビドゥ、O.T.ウィンコ、O.T.ラ・マルティーノなど細胞分裂のように新しいグループを次々と生み出していった。バスクラリネットの参加などで異色のサウンドを持つオルケスタ・ビクトリアもこの系列に入れていいのかもしれない。
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