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[2022.11] 【島々百景 第77回】 粟国島 沖縄県

文と写真:宮沢和史

 1999年の12月に公開され瞬く間に沖縄のみならず全国で大ヒットした沖縄映画がある。中江裕司監督の『ナビィの恋』である。数ある沖縄をテーマにし、沖縄で撮影された映画の中で興行的に最も成功した作品ではないだろうか。

 何らかの理由で都会から生まれ故郷の沖縄県の小さな島に戻ってきた主人公の菜々子(西田尚美)。島へ渡る船で島には似つかわしくないダンディーな老人(平良進)を見かける。実はその老紳士は菜々子のおばあ(平良とみ)の昔の恋人で南米から60年ぶりに島に戻り、おばあとその旦那さんである恵達(登川誠仁)の平穏な日常に波が立ち始め、おばあの心が60年前の自分に還っていく…。個性豊かな唯一無二の登場人物がたくさん出演していて、笑いあり、涙あり、ロマンチックな美しいシーンあり、と、大変バラエティー豊かでテンポが小気味よく、観ている方も銀幕に映る世界観にいつの間にか迷い込んでしまうような軽快で痛快で大変魅力的な物語だ。そして、嘉手苅林昌、大城美佐子、登川誠仁、山里勇吉といった民謡界の重鎮中の重鎮が出演していて、物語の要所要所で沖縄や八重山の島唄が披露される。その他にもアイルランド民謡やオペラ調の歌までたくさんの曲が散りばめられストーリーを立体的に効果的に展開させていく。言ってみればミュージカル要素が色濃く取り入れられている作品なのだ。筆者は以前から中江裕司監督の大ファンで何度もこの作品を繰り返し楽しませていただいた。その上何と、当時発表した自身の曲『沖縄に降る雪』のミュージッククリップの監督を中江祐司さんに依頼し『ナビィの恋』のスピンオフ的なショートストーリーを製作していただいたりもした。

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