- 運営しているクリエイター
#トム・ジョビン
[2022.10] 【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉛】盟友に頼らずとも見事なジョビンの歌詞 - Luiza
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
この連載の23回目の記事では、TVドラマ用にジョビンに委嘱された名曲Anos dourados(黄金の年月)のため、シコ・ブアルキに託された歌詞が、シコのあれほどの才能にもかかわらず、ドラマ放映開始に間に合わなかったというお話をご紹介しました。また、連載5回目でご紹介した有名な曲Waveについても
[2022.9]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉚】 子供たちに歌わせても、大丈夫? ─ 《Pra mode chatear》
文と訳詞●中村 安志 texto e traduão por Yasushi Nakamura
ジョビンの作品は、もともと学んだクラシックの作曲の延長として試みた作品(主に初期)、ブラジルの50年代の歌謡曲に沿った伝統的スタイルのラブソングの部類のほかに、ボサノヴァと呼ばれるようになった斬新なリズムと和声が響く作品群の中だけでみても、しっとりと慕情を語る歌、悲しい歌、人間の虚栄心に対する皮肉を
[2022.8] 【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉙】オリジナルは悲しく、英語版は明るく - 《Estrada branca》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
ボサノヴァの皮切りとも位置付けられるエリゼッチ・カルドーゾのアルバム『Canção do amor demais』は、収録曲の中でも飛び抜けて象徴的存在となった名曲「Chega de saudade」(この連載26回目)だけでなく、25回目でご紹介したヒット曲「Outra vez(またしても)」な
[2022.8]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉘】 眼と眼が合えば - 《Pela luz dos olhs meus》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
ジョビンが、女性歌手ミウーシャ(シコ・ブアルキの姉。ジョアン・ジルベルトの妻でもあった)とのデュエットで「結婚しなきゃ、結婚しなきゃ」と繰り返しながら笑顔で締めくくる名曲、「Pela luz dos olhos teus(君のまなざしの輝きに)」。この歌が、カネカン劇場のライブなどで喝采を浴びたの
[2022.7]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉗】幾重にも情熱を歌い上げる - 《Eu sei que vou te amar》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
名曲「Eu sei que vou te amar(君が好きになるとわかっている)」は、作詞家ヴィニシウス・ジ・モラエスが書いた愛の告白の歌詞で知られるゆったりとした歌で、1958年にジョビンとの共同作業で生まれました。最初は、翌59年に女性歌手レニータ・ブルーノのアルバムで録音。もともとこのアル
[2022.7]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉖】 革新の一作、実は伝統的サウンドに合わせて着想 ⎯ 《Chega de saudade》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
1958年、女王的な存在だったスター歌手エリゼッチ・カルドーゾの新アルバム『Canção do amor demais(溢れる恋の歌)』の中に収録されたジョビン作曲&ヴィニシウス作詞による「Chega de saudade」は、これを境に急速に広まっていく新しいボサノヴァと呼ばれるムーブメントの皮
[2022.6]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉔】別荘を囲む自然を仰ぎ浮かんだ歌 ⎯ 《Dindi(ジンジ)》《Correnteza(水の流れ)》
文と訳詞 : 中村 安志 texto por Yasushi Nakamura
ジョビンにとって、静かで豊かな自然に囲まれたリオ郊外の地、ポッソ・フンドにある別荘で過ごす時間は、とても貴重な時間であったようです。ここで着想し練り上げたとされる作品には、例えばこの連載の15回目でご紹介した「大西洋岸の森林を守れ」と叫ぶ「Borzeguim」など、自然を讃える作品などが多数挙げられるほか、「3月の
[2022.5]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉒】初のヒット曲に冠された妻の名前 ⎯ 《Tereza na praia》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução : Yasushi Nakamura
まだプロ活動を開始していなかった1947年当時、音楽を習っていた恩師から与えられた課題の一環として、20歳のジョビンが作曲した「Imagina」が、彼のほぼ最初の作品ではないかというお話を、この連載の18回目で申し上げました。今回は、その後音楽家としてのキャリアを徐々に築いていった過程で作られ、ジョビ
[2022.4] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉑】 20年以上世に出ずにいた、かわいいラブソング - 《Ai quem me dera》
文と歌詞対訳●中村安志 texto e taraduão / Yasushi Nakamura
ジョビンに関するこの連載第4回目にご紹介した「数学の授業(Aula de matemática)」というユーモラスな曲は、マリーノ・ピントという、 1927年生まれのシンガーソングライターとの共作でした(1958年)。
このマリーノとジョビンの共作は、少なくとも計5曲確認されており、この「Aul
[2022.4]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑳】妖女の魅力を引き立てる主題歌 - 《Tema de amor de Gabriela》
文と訳詞●中村 安志 Texto e Tradução por Yasushi Nakamura
ボサノヴァで世界に名が広まったジョビンも、実は、別なスタイルの音楽をたくさん生み出していることについて、最近の記事で何度かご紹介してきました。
例えば、時にジョビンは、ブラジルの地元色たっぷりのTVドラマや映画のための素敵な音楽を残しています。今回は、ブルーノ・バヘット監督が1983年に制作し
[2022.3] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑲】 これはショパンのプレリュード? - 《Insensatez》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
ボサノヴァの人気レパートリー「Insensatez」(愚かなこと。1961年作)は、元恋人らしき相手が去ったことを悲しみながら、「僕の繊細な心を傷つけた君は、なんて愚かなのだ」と独白する内容で歌われる名曲。どこか寂しげなトーンと、ゆったりと流れるシンプルなメロディーが心を打つのでしょうか。ブラジル
[2022.2] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑱】おそらく初作と言われる初期の作品 - 《Imagina》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
ジョビン・ファンの間でよく知られる後年のアルバムで、彼の還暦を記念し、未発表の録音などを盛り込んだ『Tom inédito(未出のトン)』という2枚組アルバム(1987年)。これに収められている1曲ですが、曲の制作はかなり初期、おそらくこれが最初の作品ではないかとも目されている作品があります。「I
[2022.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑰】 幾度もの歌詞変更、監督との対立も多かった映画の中で - 《A felicidade》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
前回のジョビン名作に関する記事では、ジョビンの名曲「Se todos fossem iguais a você」とともに、映画『黒いオルフェ』についても少しご紹介しました。
この映画は、ブラジル、イタリアとともに共同制作国となったフランスにおいて、1959年のカンヌ映画祭で最高位であるパルム・
[2022.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑯】この世のすべてが君と同じだったなら - 《Se todos fossem iguais a você》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
亡くなった愛妻エウリディケを、黄泉の国に出向いて連れ帰りたいという願いを受け入れてもらったものの、この世に戻る未知の最後で後方を振り向いてしまい、エウリディケが消えてしまうというギリシャ神話の主人公、音楽の天賦に恵まれたオルフェウス(ポルトガル語ではオルフェ)。その物語を、リオのスラム街の若者とカ