マガジンのカバー画像

アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い|中村安志

37
e-magazine Latina の人気連載「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」をまとめました。
運営しているクリエイター

#ジョビン

[2023.4]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㊲(最終回)】たった1つの音だけで作ったサンバ - Samba de uma nota só

[2023.4]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㊲(最終回)】たった1つの音だけで作ったサンバ - Samba de uma nota só

文と訳詞●中村 安志 texto e Tradução : Yasushi Nakamura

 50年代、ジョビンが幼馴染みでもあるニュートン・メンドンサと生み出した作品の中で、例えば、この連載の第8回目でご紹介したDesafinado(音外れ)は、別格の傑作でしょう。

 「自分は音が外れていると言われるが、そう指摘するあなたこそ、おかしいのではないか、これこそ新しい響き、ボサノヴァなのだ」と

もっとみる
[2023.3]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㊱】ジョビンが長く追い求めた、鳥の姿をした精霊  -  Matita Perê

[2023.3]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㊱】ジョビンが長く追い求めた、鳥の姿をした精霊 - Matita Perê

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 1973年。それまで、米国などで大きな成功を収めつつ、大手レコード会社のレーベルで作品を世に出してきたジョビンが、初めて自費制作を試みたアルバムがリリースされました。ニューヨークのスタジオで独自録音された、Matita Perê(マチータ・ペレー)です。

 60年代初期までのボサノヴァ・ブームの

もっとみる
[2023.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉟】荒野に拓かれた新首都お披露目の交響曲 - Brasília, Sinfonia da Alvorada

[2023.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉟】荒野に拓かれた新首都お披露目の交響曲 - Brasília, Sinfonia da Alvorada

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução : Yasushi Nakamura

 ジョビンがその頭角を現していった、1950年代。その後半、彼は、演劇オルフェのための音楽で成功を得た後、ボサノヴァ興隆を経て、世界的に知られる存在へと飛躍していきます。

 こうした発展の途次にジョビンが産んだ大作でありながら、あまり知られていない曲があります。熱帯の高原を開拓し、1960年に完成した

もっとみる
[2023.1]【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉞】ミウーシャを本当に治してしまったという、まじない師への電話 - Dinheiro em penca

[2023.1]【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉞】ミウーシャを本当に治してしまったという、まじない師への電話 - Dinheiro em penca

文と訳詞●中村安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 ボサノヴァ以降のブラジルポップス界で活躍した作詞家に、カカーゾ(本名:アントニオ・カルロス・フェレイラ・ジ・ブリット)という人がいます。惜しいことに、43歳という若さで、心臓麻痺のため他界しましたが、個性的な歌をいくつも残しました。

 長く愛されている作品といえば、例えば、名手エドゥ・ロボとの共作

もっとみる
[2022.12]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉝】山頂のキリスト像を見上げて - Corcovado

[2022.12]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉝】山頂のキリスト像を見上げて - Corcovado

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 リオで暮らしていると、様々な地点から、急斜面の頂上で両手を広げて街を見下ろすキリスト像の姿を目にすることができます。このコルコヴァードと呼ばれる山は、夜間ライトアップされる姿がまた幻想的。観光で頂上まで登れば、コパカバーナやイパネマといった美しい海岸のほか、ぐるりとグアナバラ湾全体を一望。マラカナ

もっとみる
[2022.11] 【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉜】アメリカ生活での出来事を3か国語でユーモラスに表現 - Chansong

[2022.11] 【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉜】アメリカ生活での出来事を3か国語でユーモラスに表現 - Chansong

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 60年代に入ってからのボサノヴァの世界的ヒット、シナトラなどの著名アーティストとの共演・レコード録音など、華麗な舞台を得たジョビンは、米国で生活する日々も長くなっていきます。そのような中、本人も異国の環境によく適応し、一部作品の英訳詞は自らが制作するなど、芸術と実務の両面で才能を発揮していきますが

もっとみる
[2022.6]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉕ 】後からボサノヴァに仲間入りした、叶わぬ恋と孤独の歌 ⎯ 《Outra vez (またしても)》

[2022.6]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉕ 】後からボサノヴァに仲間入りした、叶わぬ恋と孤独の歌 ⎯ 《Outra vez (またしても)》

文と訳詞 : 中村 安志 texto por Yasushi Nakamura

 ジョビンの作品には、ボサノヴァ黎明のタイミングよりも前のものが結構あり、その一部が、当初は、伝統的なスタイルで演奏されていたものの、後年になって新しいアレンジを施され、いつの間にかボサノヴァの一員として世に受け止められているケースがあることを、前回の「Dindi」などを含め、垣間見てきました。今回は、その1つに数え

もっとみる
[2022.5]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉒】初のヒット曲に冠された妻の名前 ⎯ 《Tereza na praia》

[2022.5]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉒】初のヒット曲に冠された妻の名前 ⎯ 《Tereza na praia》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução : Yasushi Nakamura

 まだプロ活動を開始していなかった1947年当時、音楽を習っていた恩師から与えられた課題の一環として、20歳のジョビンが作曲した「Imagina」が、彼のほぼ最初の作品ではないかというお話を、この連載の18回目で申し上げました。今回は、その後音楽家としてのキャリアを徐々に築いていった過程で作られ、ジョビ

もっとみる