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#音楽
[2023.4]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㊲(最終回)】たった1つの音だけで作ったサンバ - Samba de uma nota só
文と訳詞●中村 安志 texto e Tradução : Yasushi Nakamura
50年代、ジョビンが幼馴染みでもあるニュートン・メンドンサと生み出した作品の中で、例えば、この連載の第8回目でご紹介したDesafinado(音外れ)は、別格の傑作でしょう。
「自分は音が外れていると言われるが、そう指摘するあなたこそ、おかしいのではないか、これこそ新しい響き、ボサノヴァなのだ」と
[2023.3]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㊱】ジョビンが長く追い求めた、鳥の姿をした精霊 - Matita Perê
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
1973年。それまで、米国などで大きな成功を収めつつ、大手レコード会社のレーベルで作品を世に出してきたジョビンが、初めて自費制作を試みたアルバムがリリースされました。ニューヨークのスタジオで独自録音された、Matita Perê(マチータ・ペレー)です。
60年代初期までのボサノヴァ・ブームの
[2023.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉟】荒野に拓かれた新首都お披露目の交響曲 - Brasília, Sinfonia da Alvorada
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução : Yasushi Nakamura
ジョビンがその頭角を現していった、1950年代。その後半、彼は、演劇オルフェのための音楽で成功を得た後、ボサノヴァ興隆を経て、世界的に知られる存在へと飛躍していきます。
こうした発展の途次にジョビンが産んだ大作でありながら、あまり知られていない曲があります。熱帯の高原を開拓し、1960年に完成した
[2023.1]【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉞】ミウーシャを本当に治してしまったという、まじない師への電話 - Dinheiro em penca
文と訳詞●中村安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
ボサノヴァ以降のブラジルポップス界で活躍した作詞家に、カカーゾ(本名:アントニオ・カルロス・フェレイラ・ジ・ブリット)という人がいます。惜しいことに、43歳という若さで、心臓麻痺のため他界しましたが、個性的な歌をいくつも残しました。
長く愛されている作品といえば、例えば、名手エドゥ・ロボとの共作
[2022.12]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉝】山頂のキリスト像を見上げて - Corcovado
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
リオで暮らしていると、様々な地点から、急斜面の頂上で両手を広げて街を見下ろすキリスト像の姿を目にすることができます。このコルコヴァードと呼ばれる山は、夜間ライトアップされる姿がまた幻想的。観光で頂上まで登れば、コパカバーナやイパネマといった美しい海岸のほか、ぐるりとグアナバラ湾全体を一望。マラカナ
[2022.10] 【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉛】盟友に頼らずとも見事なジョビンの歌詞 - Luiza
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
この連載の23回目の記事では、TVドラマ用にジョビンに委嘱された名曲Anos dourados(黄金の年月)のため、シコ・ブアルキに託された歌詞が、シコのあれほどの才能にもかかわらず、ドラマ放映開始に間に合わなかったというお話をご紹介しました。また、連載5回目でご紹介した有名な曲Waveについても
[2022.7]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉗】幾重にも情熱を歌い上げる - 《Eu sei que vou te amar》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
名曲「Eu sei que vou te amar(君が好きになるとわかっている)」は、作詞家ヴィニシウス・ジ・モラエスが書いた愛の告白の歌詞で知られるゆったりとした歌で、1958年にジョビンとの共同作業で生まれました。最初は、翌59年に女性歌手レニータ・ブルーノのアルバムで録音。もともとこのアル
[2022.6]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉕ 】後からボサノヴァに仲間入りした、叶わぬ恋と孤独の歌 ⎯ 《Outra vez (またしても)》
文と訳詞 : 中村 安志 texto por Yasushi Nakamura
ジョビンの作品には、ボサノヴァ黎明のタイミングよりも前のものが結構あり、その一部が、当初は、伝統的なスタイルで演奏されていたものの、後年になって新しいアレンジを施され、いつの間にかボサノヴァの一員として世に受け止められているケースがあることを、前回の「Dindi」などを含め、垣間見てきました。今回は、その1つに数え
[2022.6]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉔】別荘を囲む自然を仰ぎ浮かんだ歌 ⎯ 《Dindi(ジンジ)》《Correnteza(水の流れ)》
文と訳詞 : 中村 安志 texto por Yasushi Nakamura
ジョビンにとって、静かで豊かな自然に囲まれたリオ郊外の地、ポッソ・フンドにある別荘で過ごす時間は、とても貴重な時間であったようです。ここで着想し練り上げたとされる作品には、例えばこの連載の15回目でご紹介した「大西洋岸の森林を守れ」と叫ぶ「Borzeguim」など、自然を讃える作品などが多数挙げられるほか、「3月の
[2022.4] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉑】 20年以上世に出ずにいた、かわいいラブソング - 《Ai quem me dera》
文と歌詞対訳●中村安志 texto e taraduão / Yasushi Nakamura
ジョビンに関するこの連載第4回目にご紹介した「数学の授業(Aula de matemática)」というユーモラスな曲は、マリーノ・ピントという、 1927年生まれのシンガーソングライターとの共作でした(1958年)。
このマリーノとジョビンの共作は、少なくとも計5曲確認されており、この「Aul
[2022.3] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑲】 これはショパンのプレリュード? - 《Insensatez》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
ボサノヴァの人気レパートリー「Insensatez」(愚かなこと。1961年作)は、元恋人らしき相手が去ったことを悲しみながら、「僕の繊細な心を傷つけた君は、なんて愚かなのだ」と独白する内容で歌われる名曲。どこか寂しげなトーンと、ゆったりと流れるシンプルなメロディーが心を打つのでしょうか。ブラジル
[2022.2] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑱】おそらく初作と言われる初期の作品 - 《Imagina》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
ジョビン・ファンの間でよく知られる後年のアルバムで、彼の還暦を記念し、未発表の録音などを盛り込んだ『Tom inédito(未出のトン)』という2枚組アルバム(1987年)。これに収められている1曲ですが、曲の制作はかなり初期、おそらくこれが最初の作品ではないかとも目されている作品があります。「I
[2022.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑰】 幾度もの歌詞変更、監督との対立も多かった映画の中で - 《A felicidade》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
前回のジョビン名作に関する記事では、ジョビンの名曲「Se todos fossem iguais a você」とともに、映画『黒いオルフェ』についても少しご紹介しました。
この映画は、ブラジル、イタリアとともに共同制作国となったフランスにおいて、1959年のカンヌ映画祭で最高位であるパルム・
[2022.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑯】この世のすべてが君と同じだったなら - 《Se todos fossem iguais a você》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
亡くなった愛妻エウリディケを、黄泉の国に出向いて連れ帰りたいという願いを受け入れてもらったものの、この世に戻る未知の最後で後方を振り向いてしまい、エウリディケが消えてしまうというギリシャ神話の主人公、音楽の天賦に恵まれたオルフェウス(ポルトガル語ではオルフェ)。その物語を、リオのスラム街の若者とカ