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[2022.9] 【映画評】 『3つの鍵』『秘密の森の、その向こう』⎯⎯ 親と子、そして祖父母をめぐるスリリングな群像劇と少女のおとぎ噺。

『3つの鍵』『秘密の森の、その向こう』

親と子、そして祖父母をめぐる
 スリリングな群像劇と少女のおとぎ噺。

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文●あくつ滋夫しげお(映画・音楽ライター)

 今月は親と子、そして祖父母という三世代をめぐる傑作が2本公開されるが、その2作品の描き方はまるで印象の違うものだ。『3つの鍵』は3つの家族の10年間に渡る様々な出来事を、ほぼ2時間の上映時間の中に盛りだくさんで描いたリアルな群像劇で、メインとなるのは親の世代だ。一方『秘密の森と、その向こう』は8歳の少女を主人公に、母と亡き祖母への想いを、もう一人の少女との出会いを通してファンタジックに描いた、73分の繊細な物語。どちらも家族への思いが深まる必見作だ。

 ヴェネチアでは『監督ミケーレの黄金の夢』(81)が審査員特別賞、ベルリンでは『ジュリオの当惑』(85)が審査員グランプリ、カンヌでは『親愛なる日記』(93)が監督賞、そして『息子の部屋』(01)が遂に最高賞のパルム・ドールを受賞し、世界三大映画祭を制したナンニ・モレッティ監督。イタリアが世界に誇る名匠の新作『3つの鍵』は、イスラエルの作家エシュコル・ネヴォの小説を大胆に脚色し、人間の心のひだを丁寧に見つめた群像劇で、監督にとっては初の原作映画化作品だ。

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