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記事一覧

[2024.9]【追悼】セルジオ・メンデス〜セレンディピティな人生を振り返る〜

文●岡本郁生  セルジオ・メンデスが亡くなったことを知ってすぐに思い出したのは、数々のヒット曲の中でも中学生のころに初めて聞いて衝撃を受けた「フール・オン・ザ・ヒル」のクールでソフト・ロックなサウンドと、当時の “中二な” (笑)日々のあれこれだったが(70年代初頭なのでリアルタイムではなくリリースからは少しあとになります)、驚いたのは、83歳というその年齢である。  「マシュ・ケ・ナダ」が大ブレークしたのが60年代半ば。それ以前にブラジルでもある程度のキャリアを積んでい

【追悼】[2014.07]数々の出会いの“マジック”が生んだ セルメン会心の新作 『マジック』

文⚫︎花田勝暁 ── あなたの音楽は世界中で聴かれ続けていて、ブラジルの音楽大使というような役割をしてきました。今、ブラジルが世界中から注目されていますが、現状をどのように感じていますか? セルジオ・メンデス(以下S) とてもいいことだと感じている。私はブラジル人で、ブラジル人であることを誇りに思っている。ワールドカップの開催で、「ワン・ネーション」の歌詞のように、沢山の国がブラジルで1つになるだろう。祝祭になるだろ

【追悼】[2013.08]セルジオ・メンデス〜日本と築いた50年の友情を祝って〜

文⚫︎花田勝暁  1964年に初来日したセルジオ・メンデス。日本に足を踏み入れた日から日本のことが好きになり、来る度にその気持ちが強くなっているという。日本の食べ物も、日本の音楽も......。そんなセルジオ・メンデスのニューアルバムは日本のファンにとってこれ以上ないプレゼントとなる内容だ。日本の若い女性実力派歌手とのコラボレーションである(ただし、うち1曲は中国出身の女性歌手カレン・モクとのコラボレーション)。ポルトガル語、日本語、英語の

[2024.9]【映画評】日本映画の明るい光『ぼくのお日さま』『ナミビアの砂漠』  

日本映画の明るい光 『ぼくのお日さま』『ナミビアの砂漠』 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  2024年は『夜明けのすべて』(三宅唱監督)『悪は存在しない』(濱口竜介監督)『ミッシング』(吉田恵輔監督)など、日本を代表する中堅監督のキャリアハイ・レベルの作品が既に公開され、この後も呉美保監督『ぼくが生きてる、ふたつの世界』や石井裕也監督『本心』などの期待作が公開を控えている。そんな邦画が充実した今年の中でも9月6日は、日本映画界の未来を明るく照らすであろう二人の新鋭監督

[2024.9]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊿】 Liniker 『Caju』

文:中原 仁  現代ブラジルのLGBTQ+アーティスト・パワーを代表する存在の、リニケル。2021年に発表した初ソロ名義のサード・アルバム『Indigo Borboleta Anil』が大ヒットし、2022年発表のラテン・グラミーで「ベストMPBアルバム」を受賞した。  日本でも「2021年ブラジル・ディスク大賞」音楽関係者投票部門で、マリーザ・モンチの『Portas』(一般投票1位)、カエターノ・ヴェローゾの『Meu Coco』(一般投票2位)といった強豪を抑えて第1位に

[2024.9]新しいモビスター・アレーナでの感動の再始動!!!アジア勢も大活躍!!!新チャンピオン決定!!!

レポート●本田 健治  今年のタンゴダンス世界選手権は、なかなかファイナルの場所も発表されず、今まで準決勝までやっていた USINA DEL ARTE で、小さく行われてしまうのか、と案じていたが、日本出発の直前になって凄いニュースが飛び込んできた。巨匠プグリエーセの出身地、ブエノスアイレス、ビジャ・クレスポ地区のモビスター・アレーナ・スタジアムで開催と発表があった。  世界の大都市に見るスーパー・アリーナ並、最大16,000人収容のまだ完成4,5年の新しい会場だ。クラブ

[2024.8]【境界線上の蟻(アリ)~Ants On The Border Line〜22】 『AKIRA REMIX』とそれに呼応する現在進行形の動き

文●吉本秀純 Hidesumi Yoshimoto  原作者の大友克洋が自ら監督を務めて制作され、1988年に公開された劇場版アニメーション映画『AKIRA』。第三次世界大戦を経た後の混沌とした2019年の〝ネオ東京〟を舞台に、それまでのアニメ作品とは異なるスケール感とインパクトを孕んだ内容でサブ・カルチャー全般に多大な影響を与えた『AKIRA』は、芸能山城組が手がけた音楽もまた強烈極まりないものであり、インドネシアのガムランやケチャ、ブルガリアをはじめとするヨーロッパ周縁

[2024.8]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2024年8月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Bedouin Burger · Ma Li Beitレーベル:PopArabia [30] 19位 Söndörgő · Gyezzレーベル:GroundUP Music [21] 18

[2024.8]現在のブラジル音楽を担う天才ギタリスト ジョアン・カマレロ 待望の来日!

文⚫︎Tatsuro Murakami ブラジルを代表するギタリスト、ジョアン・カマレロ待望の来日公演が10月22日に決まった。ゲストには、現代の音楽業界でその名を渡り歩かせている秩父出身のギタリスト、笹久保伸が演奏することになっている。その来日公演に備えて、本公演のプロデューサーである私 Tatsuro Murakami が、今回の見どころや出演者たちのプロフィール、彼らの音楽的ルーツ、そしてショーロという音楽の簡単な歴史までも振り返りながら記事を進めていきたいと思う。

[2024.8]【タンゴ界隈そぞろ歩き⑯】タンゴはピアソラと古典タンゴでできている…のか??

文●吉村 俊司 Texto por Shunji Yoshimura 個人的に最近時々気になっているのが、ライブやコンサートなどで演奏者が「今日はピアソラだけでなく古典タンゴも演奏しますよ!」などと言うケースがあること。あるいはリスナーの方で「ピアソラばかりじゃなく古典タンゴも聴きますよ」とか。話し手の認識では、タンゴは《ピアソラ(の現代タンゴ)》と《古典タンゴ》に二分されるのだろう。 いえ、気持ちはわかるのですよ。確かにピアソラ以前と以後でタンゴは変わった。でもちょっと

[2024.8] 【映画評】酷暑の夏に観る長尺の傑作2本〜『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』 『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』

酷暑の夏に観る長尺の傑作2本 『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』 『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  インド映画が長いのは、自宅にまだ冷房が完備されていない庶民が、暑さをしのいで涼むのを目的の一つとして映画館を訪れるからで、短いと早く外に出なければならないのでクレームが入る。と、真偽の程が分からない話を聞いたことがあるが、日本でもこれだけ暑い日が続くと、こんな話ももっともらしいと信じたくなってしまう。さて相変わらず猛暑が続

[2024.8]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊾】 Alaíde Costa 『E o Tempo Agora Quer Voar』

文:中原 仁  2024年の12月で89歳を迎える歌手、アライーヂ・コスタ。50年からプロ活動し、最初はボレロを中心に歌っていたが、50年代末、ジョアン・ジルベルトの手引きでボサノヴァ人たちを紹介されてボサノヴァ歌手となった。音楽仲間からリスペクトされる存在だったが、黒人であるため名声に見合った仕事を思うように得ることができずにいた。  その後、音楽の幅を広げ1972年、ミルトン・ナシメントの『Clube da Esquina』に参加して歌った「Me Deixa em P

[2024.7]【境界線上の蟻(アリ)~Ants On The Border Line〜21】アゼルバイジャンの改造エレキ・ギター界の重鎮、レフマン・メンメドリ

文●吉本秀純 Hidesumi Yoshimoto  カスピ海の西岸に位置し、ロシア、イラン、アルメニア、ジョージアと国境を接するアゼルバイジャン共和国は、人口の9割以上をテュルク系が占め、宗教においてはイスラム教(国民の70%がシーア派で25%がスンニ派)、文化的にはアゼルバイジャン人が数多く居住するイランとの結びつきが強く、旧ソ連圏の国々の中でもとりわけイスラム圏からの影響を歴史的に強く受けてきた。音楽においては、同国を代表する古典音楽=ムガームの現代最高の歌い手である

[2024.7]キューバ人ミュージシャンの実話に基づいた映画『マンボマン』〜キューバ革命記念日の7/26(金)より配信開始!

文⚫︎太田亜紀 texto por Aki Ota  『マンボマン』は、UKを拠点にラテン音楽をプロデュースするインデペンデント系レーベル、TUMI MUSICの代表モ・フィニと著名なキューバ人作曲家、エデシオ・アレハンドロが共同で監督を務めた映画。両監督にとってこれが初の長編作品となった。 モ・フィニ監督は30年以上前からキューバ音楽の普及に従事し、アフロ・キューバン・オールスターズ、オマーラ・ポルトゥオンド、エリアデス・オチョア、カンディド・ファブレ、ジューサといった