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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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記事一覧

[2025.2]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 54】 BaianaSystem 『O Mundo Dá Voltas』

文:中原 仁  バイーアのバンドと言っても、アシェーではない。近年グッと盛り上がってきた、カンドンブレをルーツとするアフロ・ブラジル音楽のアンサンブルともちょっと違う。肉体性とテクノロジーを絶妙なバランスで配合、例えは古いがワールドビートのマインドを備えたバンドが、バイアーナシステムだ。  駆け足で歩みをたどっていこう。主にギターハ・バイアーナを演奏するホベルト・バヘット、ヴォーカルのフッソ・パッサプッソを中心に2009年、バイーア州都サルヴァドールで結成。2010年、フ

[2025.2] 「ミルトンは観客席─」 グラミー賞でのミルトン・ナシメントへの愚かな扱いに、ブラジル国内での批判高まる

文●編集部  今年のグラミー賞に「Best Jazz Vocal Album」部門で、ブラジル音楽の至宝ミルトン・ナシメント(82歳)が、エスペランサ・スポルディング(40歳)と共同制作したアルバム『Milton + Esperanza』でノミネートされていた。エスペランサの企画・プロデュースにより実現した完全コラボレーション作品で、ミルトンの60〜70年代の作品の再録音が中心のアルバムだった。  『Milton + Esperanza』は、日本国内でも愛聴され、ブラジルデ

[2025.2]【映画評】激動の1960~1970年代を走り抜けた男たち - 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』『ヒプノシス レコードジャケットの美学』『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』

激動の1960~1970年代を走り抜けた男たち 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』 『ヒプノシスレコードジャケットの美学』 『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  フォーク・リヴァイヴァルが全盛期を迎えた1960年代は、後半になるとロックが台頭し、ロックは70年代を通じて音楽的な広がりだけでなく、様々な角度からあらゆる実験が試みられる。今月はそんな激動の時代を、音楽と関わりながら走り抜けた男たちが主人公の、3本

[2025.1]ブラジル映画として初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされる快挙!! ウォルター・サレス監督 『I'm Still Here』 受賞なるか!?

文●編集部  ブラジル映画 『I'm Still Here(原題:Ainda Estou Aqui)(「私はまだここにいる」の意)』が、アカデミー賞作品賞にノミネートされた。作品賞にブラジル映画がノミネートされるのは史上初の快挙!!! 同作の国際長編映画賞へのノミネートは有力視されていたが、作品賞へのノミネートにブラジルが沸いている。作品賞の他、国際長編映画賞、主演女優賞にもノミネートされ、計3部門にノミネートされた。  ブラジル映画から作品賞へのノミネートが初めてなだけ

[2025.1]【タンゴ界隈そぞろ歩き⑳】2025年はどんな年?

文●吉村 俊司 Texto por Shunji Yoshimura 2025年最初のそぞろ歩き。今年もよろしくお願いします。 さて今回は、タンゴにとって2025年とはどういう年なのだろうか、というお話。といってもこれから起きることの展望のような大それたものではなく、100周年、50周年といった節目のまとめである。それなりに数があるので今回は基本的に事項の羅列にとどめた。いくつかの話題については今後の記事で深堀りしたいと思う。 100周年100年前の1925年、タンゴ界で

[2025.1]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2025年1月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Dogo du Togo & The Alagaa Beat Band · Avoudéレーベル:We Are Busy Bodies [-] 19位 Seun Kuti & Egypt 80 ·

[2002.1]古澤巌&アサド兄弟、インタビュー〜領域の垣根を飛び越えた3人が到達した音楽とは

文●阿部浩二  ギタリストの間では高い評価を得ているアサド兄弟が、今回で2度目となる、ヴァイオリニスト古澤巌との共演盤『ブラジルの風』の発売にあわせ来日した。ツアーの合間、3人に話を聞いてみた。 ── まず最初に、古澤さんとアサド兄弟さんで一緒に演奏するようになったいきさつを教えてくれますか? 古澤(以下F) ええ、あれは、4年前かな、ちょうどピアソラが流行っていた頃で、渋谷のコクーンで、ピアソラ祭みたいなのをやっていたんですよ。で、彼らがその沢山のアーティストの内の一

[1997.11]アサド兄弟とフェルナンド・スアレス・パスのピアソラ音楽へ愛の独善的⁈大告白大会

文●高場将美  世界一のクラシック・ギター・デュオ、ブラジルのアサド兄弟は、アルゼンチン人のふつうの音楽家よりもピアソラを深く表現している。今回のインタビューは、ピアソラの最後のバイオリン奏者フェルナンド・スアレス・パスも参加して、ピアソラ音楽への独善的愛の告白大会です(「オルタナティブ・ピアソラ」のイベントの合間に収録)。 ── あなたたちとピアソラの最初の接触は? 兄セルジオ(以下S) 彼の音楽はよく知っていたよ。 というのは、70年代の末から80年代にかけて、ブラ

[1991.8]“世界的名声”を誇るギター・デュオ、セルジオ&オダイル アサド兄弟のステップ

文●ケペル木村  一昨年の春に初めて来日し、日本のギター音楽ファン、ブラジル音楽ファンに圧倒的な技巧と、その背後に見え隠れする豊かなブラジリダーヂを、十二分に満喫させてくれたセルジオとオダイルのアサド兄弟。彼らが2年振り2度目の来日を果たした。  最終日の4月23日、東京はお茶の水のカザルスホールでのコンサートも満員の盛況で、彼らの日本での人気の高まりを充分にうかがわせてくれるものだった。  比較的間接音の多いこのホールのせいもあるだろうが、2人が紡ぎ出す非常に甘美な音色に

[2025.1]『唄方プロジェクト』 ジャマイカへ行く♪(後編)

文●宮沢和史  今回のジャマイカとの交流事業には、『唄方プロジェクト』から舞台演出家であり、歌や楽器を操る詩人でもあり、今回の旅の団長を務める平田大一氏、3人組の女性民謡グループのゆいゆいシスターズ、そして、宮沢の五人が参加した。予算の都合もあり、コーディネーターというかマネージャーを同行させることができず、演者のみでの渡航となった。宮沢は何度も何度も南米を行き来しているので空路による長旅には慣れているつもりだが、そもそも日本からジャマイカへの航路は選択肢が多くない。さらに

[2025.1]本作がデビュー作となる女性VoのLicoが、ショーロクラブの3人と珠玉のアルバムを完成させた。 ──穏やかで柔らかいけれど、硬派。日本だから育めたブラジル音楽──

文:花田勝暁  2000年から音楽活動を始めた東京在住の女性Voの Lico。ブラジル音楽を中心に様々な音楽遍歴を持つ彼女は、現在、日本人女性フォホーバンド「Flor de Juazeiro」のVoとしても、在日ブラジル人ダンスコミュニティーで、演奏を重ねる。  2017年頃から沢田穣治(ショーロクラブ|武満徹ソングブック|No Nukes Jazz Orchestra|etc…)とも共演を重ねてきた彼女は、沢田からの呼びかけもあり、結成35周年を迎えたショーロクラブと録音

[2025.1]J-WAVE NX NIPPON EXPRESS SAÚDE! SAUDADE.. CARNAVAL 2025 〜今年も2月に開催!真冬の東京に出現する祝祭空間!

J-WAVE開局以来の最長寿番組、放送36周年を迎えた<NX NIPPON EXPRESS SAÚDE! SAUDADE..(サウージ!サウダージ)>(日曜17:00〜17:54放送)がプロデュースする、毎年恒例のブラジル・カーニヴァル・イヴェントが今年も2月に開催されます!なんと第27回!(すごい!) 今年のテーマは "RIO - BAHIA -TOKYO 歌とリズムの祝祭"。 カーニヴァルの都、リオデジャネイロとバイーア、そして東京を、サンバなどの多彩な音楽が結びます

[2025.1]【映画評】『アンデッド/愛しき者の不在』〜メランコリックな北欧ホラーに潜む人間存在の深遠なドラマ

『アンデッド/愛しき者の不在』 メランコリックな北欧ホラーに潜む 人間存在の深遠なドラマ 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  家を出て歩きだした初老の男を、カメラは異様に高い位置から捉える。しかしすぐに男から離れてその先に広がるオスロの街全体を、まるで(ビルの上に立ったブルーノ・ガンツのような)神の視線でゆっくりと舐めてゆく。そこに木々のざわめきや鳥の鳴き声が重なり、やがて別の建物に入ってゆく男を、印象的な構図の中で再び見つめる。何気ない曇天の情景からどことなく不穏な雰

[2025.1]Best Albums 2024 ④

2024年のベストアルバムを選んでいただきました!第二弾です。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●清川宏樹 もちろん音楽に技術や質が大切なのは言うまでもない。だが結局の所、リスナーは文脈や物語性を排して音楽を聴くことはできないし、聴覚を通して表現者の人生観や独自性に触れることを望み、それを喜びとする。いかなる情報・記録へのアクセスも容易になった今、技術の保存だけではもはや音楽は残らない。音楽に新たな価値を与え、その枠組みを押し広げる人こそが、これからの