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[2023.5]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉞】Julia Mestre『ARREPIADA』

文:中原 仁

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 2022年、男女4人組のバーラ・デゼージョがリリースしたファースト・アルバム『SIM SIM SIM』は日本でも大きな話題となった。年末には日本独自にCDがリリースされ、「2022年ブラジル・ディスク大賞」一般投票で第1位を獲得。音楽関係者部門でも1位に1票差の2位にランクインした。そして2023年7月に初来日が実現、「FESTIVAL FRUEZINHO 2023」に出演する。

  バーラ・デゼージョの一員で、そもそもパンデミック期間中の2020年に共同生活を提案し、ユニット結成へと至る道を切り開いたキーパーソンが、ジュリア・メストリ。彼女のプロフィールとバーラ・デゼージョの歴史を昨年、「勝手にライナーノーツ⑳」に書いたのでご一読ください。

  2023年4月12日、ジュリアはセカンド・ソロ・アルバム『ARREPIADA(アヘピアーダ)』をデジタル・リリースした。うち2曲は昨年1月にシングルでリリースされ当時、アルバムが2022年4月リリースと告知されていたのだが、バーラ・デゼージョが期待以上に好調に展開したこともあってか、リリースが先送りとなり、当初の予定よりも1年遅れとなった。
 
 全12曲、共作を含むジュリアの自作で、ほとんどがパンデミック期間中に作った曲。バーラ・デゼージョと、ほぼ同時進行で制作したのだろう。プロデューサーのルクス・フェヘイラ(Lux Ferreira)はドゥダ・ビーチ、マームンヂ、ヨウンなどの制作を行なった、テクノロジーにも長けた才人だ。ルクスがキーボード、プログラミングを担当。ほとんどの曲でバーラ・デゼージョのアルバム同様、アルベルト・コンチネンチーノがベースを弾いているのも聴き逃せない。ジュリアのヴィジュアルからはヤンキーっぽいキャラが伝わるが、歌は正統派。現代のポップ・ミュージックとMPBの伝統が自然に溶け合った、クォリティの高い音楽だ。
 
 タイトル曲「Arrepiada」は、ジュリアとジョアン・ジル(ジルベルト・ジルの孫。ジルソンズのメンバー)との共作。“身震い/鳥肌” といった意味だが、歌詞にはネガティヴな要素はなく肉感的だ。ジュリアが敬愛するヒタ・リーからの影響が聴きとれる。ミュージック・ヴィデオはショート・フィルム仕立て。 

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