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[2023.11]アルゼンチン大統領選挙、ミレイが勝利!_現地メディアのミレイ追加情報

編集部

 11月19日、大統領選の最終投票が終わり、アルゼンチンの新大統領に自由前進(ラ・リベルター・アバンサ)党のハビエル・ミレイ候補が選出された!8月13日のPASO予備選挙で、予想を大きく覆して圧倒的な人気を得て、トップ当選したミレイだったが、10月22日の第一回投票では現政権のセルヒオ・マサに次ぐ2番手となっていた。しかし、保守派パトリシア・ブルリッチの24%の有権者を引きつけ、リベラル派のマウリシオ・マクリ前大統領(2015-2019年)の承認を得るために、この日に向けて彼は穏健化していた。もっとも、マクリは、第一回投票から「ミレイに投票する」と発言するなど、当初から彼を擁護する姿勢を示し、第一回投票で敗れた自派のブルリッチ候補までもが、ミレイを応援する形になっていた。大統領候補の討論会でも、弁の立つセルヒオ・マサに一方的に押された形になってはいたが、1940年以降アルゼンチンを支配してきたペロン党の政策に嫌気を指していた国民は、理屈を超えて「現状打破」を訴え続けるミレイの人気が落ちることはなかった。左派にとって、非常に現実的なマサの訴える政策にも、もう耳を傾ける国民は少なかった。背景には、USAとの関係よりも中国の応援に期待するしかない左派の姿勢と、中国との関係を断絶してUSAとの関係を模索する方向を打ち出したミレイ=マクリ(ブルリッチ)の方に軍配が上がったということだろう。

新大統領になるハビエル・ミレイ


 現存する政治家を全否定し、現状を打破するためには,この選挙に勝つしかないと、過激な政策を控え、チェーンソーを手に再び姿を現すことはなく、公の場に姿を現す回数や近しい人々の姿を減らし、省庁の閉鎖を口にするのをやめ、扇動的な発言を控えていた。しかも、ベルグラーノ大学で一応経済学を学び、何冊かの本を出版し、その内容が、いつも他人の著書を段落ごと盗用して二つの大学院を出た事を暴露されたりもした。政治的に全く未知数のミレイに、アルゼンチン国民は賭けたことになる。それほど現政権はもっともらしい政策を掲げながら、とうとう140%を超える猛烈なインフレと40%の国民が貧困層、という現実を作り出してしまったペロニズムに「NO」を突きつけたい国民が多かったということだろう。
 しかし、ここからのミレイは、ブルリッチと、その背後にいるマクリの助言で、選挙中も、あまりに突出した政策は抑え気味にし、取りあえず大分穏健になるという見方も多い。
 投票前、かなりの接戦が予想されたが、有権者の大多数は、彼が提案する変革を支持した。この変革には、経済のドル化、中央銀行の廃止、「ミニマリスト」の考えに沿った国家の大幅な縮小、省庁の廃止、公共事業の廃止、国営企業の民営化などが含まれる。
 ハビエル・ミレイは、アルゼンチンの大統領候補の中で最初に、大統領選に勝利した場合の35年にわたる3段階のプログラムからなる政権計画を発表していた。その第一段階として、公共支出の大幅削減と減税改革に取り組み、労働、商業、金融の各分野で柔軟化を図ると発表していた。また、ブルリッチとマクリは、第一回投票の後に和解し、その条件として武器の所持や臓器の商業化には賛成できないとの但し書きをする一方、公教育への支持を批准していた。第二世代の対策としては、年金と退職金を削減する改革、省庁の数を8つに減らし、社会計画を段階的に縮小する。そして、計画を締めくくるものとして、医療、教育、治安システムの改革と中央銀行の「清算」が想定されている。この点では、ミレイも「中央銀行の精算のために交渉しているわけではない。しかし、その時期は早まるかもしれない」と発言している。当初よりは現実的な政策を考えているようでもある。
 マサの属する今までの政権が選択せざるを得ない中国か、中国との関係を絶ちアメリカとの関係を公言するミレイの選択に、国民はアメリカを望んだということも言えそうだ。
 さて、いずれにしても、大変な変化が起きそうだ。選挙結果の詳細や、新大統領のこれから等、示された施策などこれから発表される情報は続報としてお伝えする。

(11月20日の午後)
99%の開票時点で、ラ・リベルター・アバンサのハビエル・ミレイ氏55.69%、祖国連合のセルヒオ・マサ氏44.30%という大差で、ミレイ氏が圧勝。マサ氏も敗北を認めた。
 ハビエル・ミレイ氏は12月10日に大統領に就任する,初のエコノミストとなる。
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ハビエル・ミレイ勝利に対する現地のニュースから
(エル・ヌエボ紙)「極右経済学者ハビエル・ミレイ氏は日曜日のアルゼンチン大統領選挙で勝利し、ただちに、蔓延するインフレと貧困の拡大に苦しむアルゼンチンの「危機的」状況に直面するために「抜本的な」変化を起こすと発表した。ミレイ氏は大統領選の決選投票で与党セルヒオ・マッサ氏との勝利を収めた後、「今日、アルゼンチンの再編が始まる」と語った。」
「…わずか2年前に政界入りしたばかりのミレイ氏は、公的管理の経験がない。同氏は、中絶合法化法の廃止、合法武器市場の規制緩和、公衆衛生と教育への関税適用のための国民投票を呼びかけると述べた。」

(ラ・ナシオン紙)
1歳半年下の妹カリーナ・ミレイは、彼の人生の中心人物である。
(男性的な言い方で)"ボス "というニックネームを持つ彼女は、彼を大統領選に導いた政治的お膳立てのキーパーソンだった。「彼女がいなかったら、こんなことはなかった」とミレイは認めている。次期大統領は、2人を結びつける絆を、ユダヤ教で最も重要な預言者モーゼとその弟アーロンの絆に例えている:
「モーセは偉大な指導者だったが、偉大な普及者ではなかった。私はカリにとって、モーゼにとってのアロンのような存在なのです」。自らをカトリック教徒と定義するミレイは、ユダヤ教への改宗を考えていると語っており、「殺人的な共産主義者と親和性がある」「地球上の邪悪なものの代表」と呼ぶフランシスコ法王を強く批判している。日曜日の第1ラウンドと第2ラウンドの間の1ヶ月間、彼はその言説をかなり控えめにしたが、ローマ法王についての発言のようなものは、彼が共産主義や社会主義に対して表明してきた明白な拒絶反応と一致しており、ブラジルのジャイル・ボルソナロ、チリのホセ・アントニオ・カスト、スペインのヴォックス党といった他の極右指導者たちと一体化しているという。報道では、ミレイはドナルド・トランプ前米大統領と何度も比較されている。国際政治については、近年アルゼンチンに多額の投資をしている中国や、左派指導者ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバが統治する隣国ブラジルとは距離を置くと繰り返している。「もし私が大統領になれば、同盟国はアメリカとイスラエルだ」と述べた。

(BBCムンド アイエレン・オリーバ)
「* ブエノスアイレス大学の歴史学博士であるパブロ・ステファノーニは、「アルゼンチンにおける無限の危機感が、より急進的な言説と新しいことを試みるという考えを可能にした」と述べた。
* サン・アンドレス大学の経済学者であり、ミレイの30年来の友人であるフアン・カルロス・デ・パブロは、「彼は、上層部にいる人々、下層部にいる人々、中間にいる人々、子どもたち、大人たち、すべての人々の疲弊を捉えることに成功した」と語った。
* ミレイは、"異国から "と、今の生活を続けるよりもすべてを地獄に突き落とそうとするアルゼンチン社会の倦怠感とを結びつける術を知っていた」と、トルクアト・ディ・テラ大学政治学、政府学部長フアン・ネグリは語った。」
「第2ラウンドでセルヒオ・マッサ経済大臣に勝利したことで、ミレイは少なくとも2つのマイルストーンをマークした。新しい画期的な言説(彼はリバタリアン、無政府資本主義者と定義している)で、ペロニズム/キルチネリズム対反ペロニズム/マクリスムという勢力の選挙での優位に終止符を打ち、カサ・ロサダに到達した最初の経済学者となった。」
「有権者の大多数は、彼が提案する変革を支持した。この変革には、経済のドル化、中央銀行の廃止、「ミニマリスト」の考えに沿った国家の大幅な縮小、省庁の廃止、公共事業の廃止、国営企業の民営化などが含まれる。ミレイは、支出を増やすと言って勝ったのではなく、減らすと言って勝ったのだ。」

(BBCムンドの長編記事からの抜粋)
  「…ミレイは、幼少期の虐待のおかげで「今は何も怖くない」と言う。彼によれば、すべては1982年4月2日、事実上の大統領レオポルド・ガルティエリがアルゼンチン軍の英国領フォークランド/マルビナス諸島への上陸を発表し、655人のアルゼンチン軍兵士と255人の英国軍兵士が死亡した戦争の始まりをテレビで見たときに始まった。
 11歳だったハビエルは父に、一方の軍と他方の軍のパワーバランスが不平等であったため、軍政の決定は「錯乱している」ように思えたと語った。「父は激怒した。私を殴り、蹴り始めたんです。キッチンのあちこちを蹴られました」とミレイは5年前、ジャーナリストのアグスティン・ガジャルドとのインタビューで回想した。「私が成長すると、彼は精神的暴力を与えるために私を殴るのをやめた。「彼はいつも、僕はゴミだ、飢え死にする、役立たずになると言っていた」。しかし、彼から見れば、幼少期から青年期にかけて受けた肉体的・心理的虐待は、彼を弱らせるどころか、むしろ彼を強くした。「そのおかげで今は何も怖くありません」と彼は言う。」
 中央銀行の廃止は彼の主要な提案のひとつである。ミレイが初めて公職に就いたのは2021年、首都の代議士に選出された時だが、彼は何年も前からリバタリアンの思想を広める活動家として公の場に顔を出していた。彼がメディアに登場するようになったのは2000年代初頭のことで、2015年には頻繁に姿を見せるようになった。
 アルゼンチンのジャーナリスト、ロベルト・ガルシアは、テレビ番組で最初に彼を取り上げた一人で、彼は「他の経済学者とは違うことを言う」人物だと指摘した。当時、日刊紙『アンビト・フィナンシエロ』(Ámbito Financiero)のジャーナリスティック・ディレクターだった彼は、経済レポートについて話すために彼を番組に招いたが、彼はすぐに、ミレイがその火山的な口調のおかげで聴衆の注意を引きつける能力を持っていることを見抜いた。ミレイはララ・アビスだ。ガルシアはBBC Mundoの取材に対し、「彼は自分が話していることを理解しているだけでなく、理解しているように見える人だ」と語り、15年前には、当時ミレイが提唱したいくつかの仮説がアルゼンチン社会に受け入れられるとは誰も考えられなかったと言う。
 彼が "文化的な戦い "と呼ぶものを推進し始めたのはそのような背景があったからで、ドル化の可能性や、1970年代と1980年代の軍事政権後に人権に関して達成されたコンセンサスへの批判など、それまでは聞かれることのなかった疑問を提起した。…左翼は文化的な戦いで負けている。彼らが嘘を繰り返す限り、私たちリベラルは真実を守り続ける。私たちは道徳的に優れているので、彼らを打ち負かすつもりです」とミレイは2018年に語った。
 テレビで彼は、アルゼンチン人の経済的不安とつながる方法を知っている人物を作り上げ、彼らは変化を熱望し、彼に共感した。
 ”ミレイはテレビのためのキャラクターを作り上げた。私は何度も彼に、クレイジーを演じるとおかしくなるから気をつけろと言った”と、ミレイと経済思想史やオペラのレコードについて意見を交わしていた友人のフアン・カルロス・デ・パブロはBBCムンドに語った。

 「”キャラクターが人間を蝕むのは初めてのことではない”と彼は言う。ミレイは、彼の主な味方はアメリカとイスラエルになるだろうと言っている。それは2年前の政党ラ・リベルタッド・アバンサの設立から始まった。この政党で2021年の立法委員選挙を戦い、ブエノスアイレス市では得票率17%に達し、最高の予想をも上回った。大学の廊下やテレビのセットだけでなく、アルゼンチンやラテンアメリカの主要空港を管理する実業家エドゥアルド・ユルネキアンが所有するグループ、コルポラシオン・アメリカに勤務し、2021年に副議長に就任する前日までチーフ・エコノミストの職にあった。2年後、ミレイは、地方知事を持たない多様な新党で、公職に1つしか就かなかったが、大統領選の戦いで勝利することができた。 
 彼の勝利がもたらす最初の疑問は、彼が主な「敵」とみなしてきた国家から、そして次期大統領が軽蔑しているからこそほとんど知らない領域から、彼の急進的なアイデアを実際にどれだけ実現できるかということだ。
 また、選挙での支持によって当選したマウリシオ・マクリとの政治的共存のあり方も解決しなければならない。前大統領は、彼の同盟者なのか、指導者なのか、彼の最も急進的な部分を調整する担当者なのか、それとも彼の最も野心的なプロジェクトを遂行するための障害なのか。

さらに彼は、短期間での変化を期待する、非常に高く多様な期待を持つ異質な有権者を満足させなければならない。「トルクアト・ディ・テラ大学の政治学・政府プログラムのディレクターであるフアン・ネグリは言う。
「大統領は、ドル化シートの下で、他の問題に対する首尾一貫した見解を欠いた、縮小された技術チームとともに就任するだろう」と彼は付け加える。 ミレイが大統領に就任するとき、エル・レイ、エル・レオン、エル・ロコ、エル・アビス・ララ、つまり、初日から政府とアルゼンチン国家のトップとなることに対して怒りをあらわにしている男にとって、真のリトマス試験紙が始まる。 

(ラティーナ2023年11月)

 
  



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