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[2022.12]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉙】 Roberta Sá 『Sambasá』

文:中原 仁

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 ホベルタ・サーが12月19日、42歳のバースデーを迎えたと知り、そうか彼女も40代か、、と思わず遠くを見つめてしまったが、デビュー・アルバム『Braseilo』を発表したのが2005年。時の経過は早い。
 
 これまで、ほとんどのアルバムが「ブラジル・ディスク大賞」にランクインし、日本での人気も安定しているホベルタ・サー。前作『Giro』(2019年ブラジル・ディスク大賞一般7位、関係者5位)はジルベルト・ジルの作品集(ジルとホベルタの共作を含む)で、育った場所はリオだが生まれは北東部の、彼女のルーツもうかがえる秀作だった。また、このアルバムではデビュー以来ずっと音楽監督をつとめてきたホドリゴ・カンペーロではなく、ジルの息子ベン・ジルがプロデュースし、音楽の色調がそれまでとは一変した。
 
 2021年、長らく “幻のデビュー作”と伝えられてきたが実際は『Braseilo』の直後に録音したサンバとボサノヴァの名曲集『Sambas & Bossas』を復刻リリース、日本ではCDも発売された。そんなタイミングで2022年12月にデジタル・リリースした3年ぶりの新作が『Sambasá』。とても分かりやすいタイトルのサンバ・アルバムだ。
 
 『Sambasá』は、7曲25分、ミニ・アルバムのサイズ。ホベルタはデビュー以来、サンバを歌い続けてきたが、以前ホドリゴ・カンペーロがやっていたようなサンバとテクノロジーのミックスは全くなく、どストレートなサンバ。懐古趣味もなく、80年代初頭の正統派パゴーヂから発展してきた現代のサンバの王道に則っている。
 
 音楽監督と編曲は、カヴァキーニョ奏者のアラーン・モンテイロ(Alaan Monteiro)。マルチーニョ・ダ・ヴィラからジョアン・カヴァルカンチまで共演してきた若手だ。参加メンバーも全曲、ほぼ一緒でサウンドの統一感があり、現地の現場に数年間、行ってないのでここからは経験に基づく想像だが、あ、これが今の現場の音だ、と気づかされる。

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