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[2023.12]Best Albums 2023 ①

2023年ベストアルバムを選んでいただきました!第一弾です。
(カタカナ表記のものは国内盤として発売されています)
年明けにも順次掲載予定です。

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●おおしまゆたか

翻訳屋
年金生活者にとってストリーミング・サーヴィスがいかにありがたいものか、身にしみて実感する今日この頃。

 番外でナスポンズの3曲入りマキシ・シングル(?)「ナスの缶詰めVer.1」。今年はジャズばかり聴いていた。⑧はウェールズとアイルランドの伝統音楽だが、精神はジャズだ。一方⑦はECMだが、中身はフォーク・ミュージック。②はジャズと伝統音楽の理想的合体。伝統音楽では、⑨が今イングランドのフォーク界最高のデュオによるクリスマス・アルバム。一番嬉しかったのはアイルランドのシンガー③。次に嬉しかったのは札幌のデュオの10年ぶりの新作④。新顔はやはりジャズで、⑤はニュージーランド、⑥はモンゴル出身のどちらもピアニスト。⑤はバンドもいい。⑥はこのスタジオ盤もいいが、YouTube のライヴ映像をご覧あれ。もう一人スコットランドのピアニスト Fergus McCreadie も「発見」したが、今年はアルバム無し。①と⑩も国産のピアニストが核で、今年はピアノばかり聴いていたことになる。

(発売日順)
① 林正樹グループ / Blur the border(Masaki Hayashi Group / Blur The Border)

② Anders Jormin / Pasado En Claro

③ Daoirí Farrell / The Wedding Above In Glencree

④ Rinka / Rinka 7

⑤ Tania Giannouli / Solo

⑥ Shuteen Erdenebaatar / Rising Sun

⑦ Sinikka Langeland / Wind And Sun

⑧ Catrin Finch & Aoife Ní Bhriain / Double You

⑨ Bryony Griffith & Alice Jones / Wesselbobs

⑩ shinono-me / 残月は暁をうつす


●田方春樹(lessthanpanda)

IT業界人/週末ギタリスト。大手メディアでは取り上げられない世界中の優れた音楽を紹介する情報サイト「Música Terra(ムジカテーハ)」を主宰。

音楽は決して不要不急のものではない。今年も数多くの音楽に触れ、ときには癒され励まされ、ときには今この世界各地で起こっていることについて考えさせられたりした。今回の選定は順不同だが、それぞれ自分にとって大切な意味のある作品ばかりだ。たとえば①〜③は音楽を聴く喜びや幸せを噛み締めさせ、大きな心の癒しを与えてくれた。
パレスチナの現状を音楽という表現を通じて訴えるファラジュ・スレイマンの④には、抑えきれない怒りや悲しみが込められており激しく心を揺さぶられた。⑤や⑥も、歴史の複雑な記憶を現代に語り継ぐための重要な作品と思う。
⑦〜⑨は、音楽の新たな可能性を追求する作品だった。彼らは純粋な知的好奇心から、音楽の持つ力や表現力をさまざまな角度から探求している。⑩は、音楽のエンターテインメントとしての側面を存分に楽しめる作品だった。

(順不同)
① Clara & Flaira / Áua

② Laufey / Bewitched

③ Itamar Borochov / Arba

④ Faraj Suleiman / As much as it takes

⑤ Payadora Tango Ensemble / Silent Tears: The Last Yiddish Tango

⑥ Goran Bregović / The Belly Button of the World 

⑦ ノウワー / ノウワー・フォエバー(Knower / Knower Forever)

⑧ Foehn Trio / ELEMENTS

⑨ Vuma Levin / The Past Is Unpredictable, Only the Future Is Certain

⑩ Leo Middea / Gente


●山口詩織

リスボンの音楽シーンにどっぷり浸かったライター兼DJ。ポルトガル音楽の多様性を紹介すべく活動中。

ポルトガル音楽で10枚。アルファベット順。
今年はシーンに衝撃を与えるような決定的な一枚に欠いた印象だが、秀作は多かった。
ブルーノ・ペルナーダス・バンドのヴォーカル=マルガリーダ・カンペーロや、人気若手ポルトガル・ギター奏者ガスパール・ヴァレラのバンド=エスプレッソ・トランスアトランティコなどの、デビュー組の初作とは思えない安定感に驚きつつ、ベテラン勢の現状に甘んじない軽やかな方向転換が印象的だった。
一枚選ぶとすれば、ポルトガル屈指の名ギタリスト、トー・トリップスのソロ三作目(★)になるだろうか。国民的バンド=デッド・コンボでの相方ペドロ・ゴンサルヴェスの死を胸に抱きながら前に進み続ける、という彼の強い意志が音楽から強く感じられ、今年折に触れよく聴いた作品だった。

(アルファベット順)
● APRIL MARMARA / Still Life

● BEATRIZ PESSOA / Prazer Prazer

● EXPRESSO TRANSATLÂNTICO / Ressaca Bailada

● JOÃO BORSCH / É Só Harakiri, Baby

● THE LEGENDARY TIGERMAN / Zeitgrist

● MARGARIDA CAMPELO / Supermarket Joy

● MARO / Hortelã

● METAMITO / Metamito

● PEDRO RICARDO / Soprem Bons Ventos

● TÓ TRIPS / Popular Jaguar (★)


●山本幸洋

アメリカス音楽ファン
『レコード・コレクターズ』『ミュージック・マガジン』などでラテン全般を執筆。

 新型コロナウイルス感染症、フィジカルCD発売点数の著しい減少、記録的な円安による輸入盤の価格高騰。流通がまだまだ混乱しているようで、キューバ〜サルサ〜ラテン・ジャズあたりはUSAリリースが大半を占めているように思う。その範囲での10枚をABC順で。
 もっとも印象深いのは、コンガ奏者チェンボ・コルニエールが、『芸術家、音楽家そして詩人』というタイトルで、1970年代のニューヨーク・ラテン社会が産み出したサルサというコンセプトを再提示したことである。ちょっと抽象的な芸術、けっこう社会民族的な思想、それらが入り混じり、カオスの中から湧き上がるサルサの原点を思い起こさせた。生ける伝説フェリーペ・ルシアーノ健在! 過去を振り返る視点で面白かったのはアルトゥーロ・オファリル『遺産の数々』で、子供のころに父チコと聴いた記憶の中の音楽をアルトゥーロ自身が再現したもの。歌アルバム三作『歌う』『マルシアークでのライヴ』『人生』はいずれもフィーリングの暖かさが心地いい。歌を引き立てるラテン・サウンドの包容力を感じる。『ミミとトニ』は親子共演のカタチだが実質的にイントロデューシング・ミミという子親愛のサルサ~ラテン・ポップス。ミミと同い年のNORA(オルケスタ・デ・ラ・ルスの)が「スキヤキ(上を向いて歩こう)」を仲良く歌っている。9月に来日したハロル・ロペス・ヌッサ関係『エル・コミテー・ライヴ』『アメリカン・スタイルのティンバ』は相変わらず躍動感最高なキューバン・ジャズ、期待通りだ。キューバン・ジャズといえばジェイン・バネットの女性ユニット“マケケ”も順調にアルバムを制作している。日本に来てくれないかな。

● Arturo O’Farrill / Legacies / BlueNote 602455068408, USA

● Chembo Corniel Quintet / Artistas, Músicos y Poetas / Chemboro CRI-8182, USA

● Dafnis Prieto featuring Luciana Souza / Cantar / Dafnison 009, USA

● El Comité live / Un Domingo En El Teatro Martí / HighNote HCD7339, USA

● Gonzalo Rubalcaba-Aymee Nuviola / Live in Marciac / 5 Passion 859761754437, USA

● Harold López-Nussa / Timba a la Americana / Blue Note 00602448875297, USA

● Jane Bunnett & Maqueque / Playing with Fire / linus 270788, Canada

● Little Johnny Rivero & Anthony Almonte / Mejor Que Nunca / Truth Revolution TRRC071, USA

● Mimy Succar & Tony Succar / Mimy & Tony / Unity Entertainment UNI0003, USA

● Omara Portuondo / Vida / one world OMONE123

(ラティーナ2023年12月)


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