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シコ・ブアルキの作品との出会い|文と訳詞●中村 安志

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e-magazine Latina の人気連載「シコ・ブアルキの作品との出会い」をまとめました。
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#ブラジル文化

[2022.9] 【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉝】希望が見え始めた時代  - 《Fantasia》

[2022.9] 【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉝】希望が見え始めた時代 - 《Fantasia》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 権力を批判する歌を多く書いたことで知られるシコ・ブアルキですが、彼が、厳しかった抑圧時代の辛さとその先に見え始めた希望を、権力との対抗を直接示さない形で表現した、「Fantasia(幻想)」という、少し角度の異なる作品があります。この歌は、1979年に上演された男性4人組コーラスのMPB-4のライ

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[2022.8] 【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉛】 無念にも先立っていった人への慕情 -  《Pedaço de mim》(私のひとかけら)

[2022.8] 【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉛】 無念にも先立っていった人への慕情 - 《Pedaço de mim》(私のひとかけら)

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 シコが作った演劇『ならず者のオペラ(Ópera de malandro)』の中で歌われる1曲に、とても物悲しい歌があります。息子が軍政時代に罪もなく捕えられ、帰らぬ人となった、ズズ・アンジェルという実在の女性のことを思い書いた「Angelica」という作品(この連載の27回目の中で、ご紹介しました

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【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉙】3度目の正直で居着いた人 — 《Teresinha》

【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉙】3度目の正直で居着いた人 — 《Teresinha》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 シコ・ブアルキというシンガーソングライターは、様々な形で権力と対決する音楽を編み出してきた一方で、慎ましく生きる人々の生き様や、それぞれの思いなどに焦点を当てた歌も数多く、時代背景を抜きにしても、真っ直ぐに人々の心を打つ作品がいくつもあります。この連載の第6回目でご紹介した、石切りで働き慎ましく生

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[2022.6]【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉖】価値が減じたお札を皮肉った歌- 《Tamandaré》

[2022.6]【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉖】価値が減じたお札を皮肉った歌- 《Tamandaré》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 軍政による言論抑圧に対抗するシンガー・ソングライターというイメージの一方で、シコ・ブアルキが初めて発禁を命じられた作品が批判の対象としたのは、政治ではなく、巷の経済問題でした。これは、シコの芸歴をかなり知るファンにとっても、意外なことかもしれません。

 中南米に馴染みある方々の間では、様々な時期

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[2022.5]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉕】カーニヴァルでの苦々しい再会 — 《Quem te viu, quem te vê》

[2022.5]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉕】カーニヴァルでの苦々しい再会 — 《Quem te viu, quem te vê》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 ブラジルにおいて、カーニヴァルは、多くの市民の節目となる年中行事。日本の夏祭りの夜の幻想が、それまでの暮らしの回想や、その先の夢をもたらすことがあるように、ブラジルの人々にとって、日々暮らすコミュニティでの生活や人間関係の変化、夢に描いていることが更に膨らんだり消えてしまったり。お祭りとは、そんな

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[2022.4] 【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉓】ならず者たちと、失われた彼らの美学に光を当てた歌 - 《Homenagem ao malandro》

[2022.4] 【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉓】ならず者たちと、失われた彼らの美学に光を当てた歌 - 《Homenagem ao malandro》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 ブラジルの日常において、特に親しい者どうしの会話では、マランドロ(malandro)という存在がよく口にされます。気軽な例でいえば、仲間の誰かが次々と女性に迫りよくモテるプレーボーイであるのを指し、「あいつはマランドロ(=ワル)だ」と称したりしますし、普通には解決しにくい問題を巧みに(時にずるい方

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[2022.3] 【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い⑳】多様性溢れる国でのアイデンティティと、マエストロ・ジョビンへの敬意 - 《Para todos》

[2022.3] 【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い⑳】多様性溢れる国でのアイデンティティと、マエストロ・ジョビンへの敬意 - 《Para todos》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 日本の面積の22倍半という、広大な国土を擁するブラジル。カリブ海側、赤道をまたぐアマゾンの熱帯から、冬に雪も舞う南部まで、地域ごとの自然、文化、社会などが非常に多様であることは、大きな特徴です。

 シコ・ブアルキは、リオデジャネイロという街で暮らしながら、この旧都市に各地から渡ってきた人々と共生

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[2021.09]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い⑧】女性が一人称で語る歌 ─ シコ・ブアルキ作《Atrás da porta》と《Olhos nos olhos》

[2021.09]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い⑧】女性が一人称で語る歌 ─ シコ・ブアルキ作《Atrás da porta》と《Olhos nos olhos》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

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お知らせ●中村安志氏の執筆による好評連載「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」についても、今後素晴らしい記事が続きますが、今回も一旦、この連載「シコ・ブアルキの作品との出会い」の方を

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[2021.08]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い⑦】2言語をまたぐ作詞 — シコ・ブアルキ作《Joana francesa》

[2021.08]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い⑦】2言語をまたぐ作詞 — シコ・ブアルキ作《Joana francesa》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

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[2021.08]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い⑥】慎ましく生きる人に向ける眼差し — シコ・ブアルキ作《Pedro pedreiro》

[2021.08]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い⑥】慎ましく生きる人に向ける眼差し — シコ・ブアルキ作《Pedro pedreiro》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

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